パーパス(purpose)が注目される理由について
近年、企業としての目的や存在意義を意味する「パーパス」について、企業経営やブランディングなどの観点から、パーパスへの関心が高まっています。
本記事ではパーパス経営の概要やメリットについて触れ、パーパス経営が広がった背景、導入企業の事例を紹介します。
パーパスとは?
「パーパス(Purpose)」は、一般に「目的、意図」と訳される言葉です。近年では、経営戦略やブランディングのキーワードとして用いられることが多く、企業や組織、個人が「何のために存在するのか」という「存在意義」のことを意味します。
ビジネス用語として聞くことが多いのは「パーパス・ブランディング」「パーパス・ドリブン・マーケティング」が多いです。
■パーパス・ドリブン
「全ての物事がパーパスを軸として始まっている状態」を指します。企業においては、「組織全体が、パーパスに導かれている状態」あるいは「組織内でパーパスを共有し、自社の商品・サービスに反映している状態」という状態のことを指します。
■パーパスブランディングとは
企業経営をパーパスに基づいて行うべきであるというブランディング手法のこと。パーパスを社会全体に認知・共感してもらい、企業の長期的なブランディング強化につなげることを目的としています。
例えば「自分の勤めている会社は何のために存在しているのか」「その社員たちは何のために働いているのか」そういった存在意義を意味する言葉として使われます。
パーパスを明確に打ち出すことで、ブランディング・マーケティングにも繋がり、社員・従業員のモチベーション向上にも繋がります。
こういった考え方・企業経営スタイルが海外だけではなく日本でもトレンドになりつつあるのが現状です。
パーパスが見直されるようになった、3つの背景
①新型コロナウイルス感染症の拡大
新型コロナウイルス感染症は世界中に多大なる衝撃と影響を与え、各企業は自分たちのパーパスを改めて見つめ直すようになった。
社会情勢が刻々と変化していく中で、パーパスは次第と企業の指針となり、「自分たちがあるべき姿、今やるべき事業活動」を考えるようになりました。
実際に、コロナ禍においてさまざまな日本企業が人々の生活や医療環境を守るための取り組みが実施されました。
たとえば、トヨタ自動車株式会社は、医療現場を支援するべく「ココロハコブプロジェクト」を立ち上げました。プロジェクトの一環として、三つの工場で医療用フェイスシールドの生産に取り組み、2020年4月にはフェイスシールドを月産4万個(約2,000個/日)生産しています。
また、シャープ株式会社は、国内の深刻なマスク不足を受けて、2020年3月よりマスクの生産を開始しました。
初回抽選販売において、マスク4万箱に対して、470万人以上が応募、当選倍率は100倍以上となり、多くのメディアに取り上げられるなど話題になりました。こちらもパーパスの具現化を実施したモデルケースです。
②DXの推進
リモートワークをはじめとした、デジタルトランスフォーメーション(DX)が推進されたことにより、社内稟議などの意思決定プロセスも大きな影響を受けました。
「ハンコレス」、「ペーパーレス」などと目に見える部分だけの変更を実現しても、複雑な稟議プロセスが残ったままでは、DXの恩恵を十分に享受できないため、意思決定プロセスそのものを変えていく必要があります。
そのため、適切に権限委譲が行われ、迅速に意思決定が行われるためには、パーパスを組織に浸透させることが重要です。
DXの推進によってビジネスを変革していくためには、「自分たちが何のためにそれを行っているのか」という原点に、全従業員が立ち返る必要があります。
③ミレニアル世代の台頭
パーパスを明確にしない企業はもはや生き残れない、とまでいわれる理由の1つは、「ミレニアル世代」(2000年代に成人あるいは社会人になる世代)と呼ばれる若い人々の価値観にマッチしているからだ。
Facebook共同創業者で会長兼CEOのマーク・ザッカーバーグ氏は、2017年5月に母校ハーバード大学の卒業式で行った演説が話題を呼びました。
ザッカーバーグ氏はスピーチの中で、パーパスの重要性をこう語りかけました。
ミレニアル世代とは現在の20~30代を指しており、これからの消費やビジネスの主軸を担う存在といえるのです。
パーパスを見直し、ミレニアル世代の共感を得ることは、今後の企業にとってさらに重要な意味を持つと同時に、価値的なパーパスをいかに社会に認知・共感してもらうかが肝要です。
パーパスを策定するメリットについて
パーパスは策定するだけでなく、パーパスが社内に浸透し、パーパスに基づく企業活動が実際に行われる必要があります。ここではパーパスが企業に根付くことにより期待できる、メリットを3つの観点からご紹介します。
①より良い意思決定につながる
パーパスは、企業にとって重要な戦略・方針を決める際の「道標」とも言えます。そのため、パーパスが社内に浸透していれば、自社にとってベストな選択をスピーディーに決定でき、より良い意思決定につながります。
より良い意思決定が可能になることで、「新商品・サービスの開発」、「ビジネスモデルの変更」、「業務フローの改善」といった改革に着手しやすくなり、企業のさらなる成長が期待できます。
②従業員のロイヤリティ・自律性が促進される
パーパスは従業員にとって「自社で働く意義」とも言えます。パーパスを明確に示し、浸透させることができれば、パーパスは企業と従業員をつなぐ「共通項」となります。よって従業員は、自分の担当する業務に誇りを持てるようになり、従業員の「ロイヤリティ」や「自律性」の促進が期待できます。
自社のために、能動的⇨自発的に行動できる従業員が増えることで、「イノベーションの創出」、「生産性の向上」にもつながります。
③サスティナビリティな開発につながる
先ほどご紹介した通り、パーパスには「社会的意義」も含まれています。実際、パーパスを実現する手段の一つとして、「二酸化炭素排出量の削減」や「再生可能エネルギーの使用」などに取り組んでいる企業もあります。
このように、パーパスに基づく企業活動が長期的・継続的に行われていくことで、持続可能な開発の実現にもつながります。
パーパスを策定する際の注意点
パーパスに関連して、しばしば問題となるのが、「環境配慮をうたっておきながら、実際には配慮していない」「パーパスに掲げていることと、実際の企業活動が伴っていない」といった「グリーンウォッシュ(パーパスウォッシュ)」と呼ばれる状態です。
こうした状態が続くと、ステークホルダーからの信頼を失う恐れが高くなるので、策定時には注意が必要です。グリーンウォッシュ(パーパスウォッシュ)を防ぐためには、以下のようなポイントでパーパスを策定するとよいでしょう。
グリーンウォッシュ(パーパスウォッシュ)を避けるためには、パーパスの内容と自社の企業活動に一貫性があることや、自社としての実現可能性があることが重要です。また、企業として利益を求める必要があるため、企業の成長につながる内容であることも欠かせません。従業員のロイヤリティや自律性を促すためにも、従業員のモチベーションが高まる内容である必要があります。また、パーパスである以上、社会的意義を持った内容であることも重要です。
まとめ
「時代の変化」や「戦略・組織の多様化」を受け、パーパスに注目が集まっていますが、パーパスを浸透させることで、より良い意思決定につながります。また、従業員のロイヤリティや自律性が促進されるといったメリットが期待できます。
企業を選ぶ際にも、パーパスが策定されているだけでなく、グリーンウォッシュ(パーパスウォッシュ)という観点にも注意しながら、様々な形で社会に貢献することに繋がれば幸いです。
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