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X線分光撮像衛星(XRISM)プロジェクト、note始めます。

はじめまして。JAXA X線分光撮像衛星(XRISM)プロジェクトです。この記事は、私たちにとってnoteへの最初の投稿です。そこで、みなさまへの自己紹介を兼ねて、XRISMがどんなプロジェクトなのか、noteで何を発信しようとしているのか、などについてまとめてみたいと思います。

XRISMとは?

XRISMは、一言で言うと宇宙天文台です。衛星に望遠鏡と観測機器を載せX線で宇宙を観る天文台、それがXRISMです。2021年10月現在、私たちは2022年度中の打ち上げを目指して、衛星や搭載する機器の開発、衛星を運用したり観測データを解析したりする準備を進めています。

なぜ、X線で宇宙を調べるのか、不思議に思われるかもしれません。

私たちは、宇宙で起こる激しい現象や熱いガスを調べたいのです。例えば、宇宙の大規模構造はどのように進化してきたのか、星の死によってどんな元素がどんな風に宇宙空間に撒き散らされるのか、ブラックホール周辺でガスはどんな運動をしているのか、そういった謎を解き明かしたいと思っています。

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ここで挙げた現象には、数百万度にも達する熱いガスが関わっています。高温ガスはX線を放射しますから、私たちが解き明かしたい謎を調べるにはX線による観測が不可欠なのです。さらに、これまでの研究によって、実に様々な天体がX線を放射していることがわかっています。宇宙に存在するあらゆる天体の理解のために、X線の観測が必要なのです。

noteで伝えたいX線で観る宇宙の魅力

私たちは、X線による観測が教えてくれる宇宙の姿をお伝えしたいと考えています。

ところで、皆さんは星空や宇宙の写真をご覧になったことがあるでしょうか?ネットや図鑑、宇宙の写真集などで見かける写真の多くは、人間の目が感度を持っている「可視光」で捉えた宇宙の姿です。人間の目が感じることのできる光、可視光によって宇宙を調べる研究は、とても古くから行われてきました。

一方、X線天文学は若い学問です。X線は地球の大気に吸収されてしまうため、地上からは観測することができません。ですから、人類が地球大気の外で観測する術を獲得して初めて、X線を使って宇宙を調べることができるようになりました。それは、今から、ほんの60年ほど前のことです。天文観測が始まったのは、紀元前3000年ごろに始まったとされる古代エジプト時代と言われています。それと比べると、X線天文学がいかに新しい学問領域であるか、想像していただけると思います。

X線天文学は、その短い歴史の中でも、新しい宇宙の姿を私たちに教えてくれました。例えば、銀河と銀河の間に高温ガスがあることを見つけたのもX線による観測です。ブラックホールや中性子星のようにコンパクトな天体もX線を使って、ようやく調べることができるようになりました。

人類に新しい宇宙像を示してくれたX線観測ですが、馴染みが薄い方が多いのではないでしょうか。

X線天文学が比較的新しい天文学なので世の中に浸透していないこと、また、人間の目では観ることができない「光」で宇宙を調べることから、どうしても敷居が高くなってしまうようです。可視光望遠鏡のように手軽に家で使えるようなX線天文望遠鏡はありませんし、メディアで見かける美しい天体写真のほとんどは、可視光の画像です。私たちもX線天文学の魅力を伝える努力が足りなかったのかもしれません。

ですから、私たちはこの機会に、みなさんとX線で宇宙を観測することのワクワクを共有できたら嬉しいなと思っています。

エンジニアやサイエンティストの人となり

noteには、XRISMの開発に携わっているエンジニアやサイエンティストへのインタビュー記事も投稿する予定です。

XRISMの開発には多くの人が関わっています。完成までには、機器の製作だけでなく、各機器の評価試験、機器を組み上げての総合試験といくつもの段階を経なければなりません。開発と同時進行で、衛星を運用するための地上システムの整備と動作確認試験も必要です。さらに、打ち上げ後に行う最初のフェーズで観測するための天体を選び、観測計画を作成し、データ解析の環境を整えておきます。

打ち上げ前に乗り越えるべき多くの困難がある中で、どんな人々がXRISMプロジェクトに参加しているのか、どのように衛星開発が進んでいくのか、どうしてXRISMに携わるようになったのか、そういったことをインタビュー記事でお伝えできればと思っています。

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XRISM noteこれからよろしくお願いします。今後の記事もぜひお楽しみに!

(執筆:生田ちさと)

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