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縋る。

子供の頃読んだ以来、再読していなかった本を読んだ。

安房直子さんの「夢の果て」である。

最後に読んでから30年は経ったろうか。
懐かしさでページを捲ったが、一行目を読み終わる前に既に視界が涙でいっぱいになってしまった。

思えば2歳の頃から「私がいる世界は皆がいる世界と違う」としか感じる事ができなかった。
家族とも、誰とも、その世界は違っていた。
圧倒的に、ひとり。
違和感と疎外感の中に揉まれ続けて疲労困憊する日々。
それは今でも変わらない。
今ではそれが私の普通になったけれど、幼心には恐怖でしかなかった。

「あの頃」の私はいつでもどこでも「こことは違う場所」に連れて行ってくれる物語に縋っていた。
そうしないと生きていけなかった。

あれから時が過ぎた今もそう大して変わらない所を見ると、きっと私は何処か異次元の存在のようなものなのだろう。
多少の世渡りの仕方を覚えただけで。

でも、やっと最近「違う世界もちょっとはいいなあ」と思えるようになってきた。
見える角度が違っていても、美しい物は全て美しい。

それだけでも、いいじゃないか。

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「夢の果て」安房直子 著

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