名優のコメディ。映画『大統領の理髪師』、韓国、2004年。
大好きなソン・ガンホ主演作品、しかもコメディ。ものすごく楽しみにして、劇場に見に行った記憶があります。
大統領のお膝元の町で、偶然大統領の理髪師になった主人公と彼をとりまく1960~70年代の「暗い韓国の歴史」。当時の韓国といえば、政治的腐敗、不正選挙、学生運動、軍事クーデターetc...最近の映画なら『KCIA 南山の部長たち』の時代です。
それを、庶民目線のコメディに描いてしまえるところがすごい。映画の公式ウェブサイトでも河野太郎が「韓国人がこの時代のことを語れるようになったのがすごい」とコメントしているけど、本当にそうだと思う。できるなら、彼の父親・河野洋平(1937-)のコメントだと、世代的な重みが増した気がします。
監督のイム・チャンサンは新人さんとか。韓国は本当に映画大国です。奥さん役のムン・ソリもいい演技だし、子役もかわいくてぴったりだし、何から何まではまっていて、最初から最後までおもしろくみることができました。
ただ、はまりすぎて、ちょっと微妙な気がしないでもないです。これは、庶民から見た歴史を描いたコメディというより、ソン・ガンホのための歴史映画って感じで。いえ、ソン・ガンホは大好きですけれど。
この映画は、普通の一市民が政治に翻弄される悲劇をコメディで描いて、ラストは童話的なハッピーエンドになります。このラストのおかげで、見た後すっきり、救われます。でも、同時にちょっと歴史物のリアリティがゼロになってる気もします。
まあ、これは好みの問題。例えば、韓国の歴史題材にした『スウィング・キッズ』は悲劇で終わらないで欲しいと願い続けながらみていたので、ラストがつらすぎました。『大統領の理髪師』もラストが悲劇だったら辛すぎたかもしれませんし。そんなにあれこれ考えてしまうほど、見ごたえある作品です。
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