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ほんいち考察、ヤンキー漫画と呉服のカンケイ。呉服屋の店主が魅了されたヤンキー漫画の世界-きもの庵名子 名子央さん-

「本棚を見ればその人のことがわかる」という格言があるほど、誰かの愛読本は、ときにその人のひととなりを知る貴重な資料となります。
ならば商店街の本棚があったら商店街のことがわかるかも?「ほんいち本棚」は、本町一丁目商店街の店主たちからおすすめの本でできた本棚です。この本棚が、店とお客さん、店と店を繋ぐきっかけになりますように。

月1更新の「ほんいち本棚」の第4弾は、きもの庵なごの名子央さん、新田珈琲の新田夫妻です。noteでは、名子さんのおすすめ本について紹介します。本をきっかけに名子さんが呉服屋になるまでの道のりを知ることができました。

仕事中の渋い和装から普段着まで いつもおしゃれな名子さん。昔から大のファッション好きだという。学生時代には、かつて敦賀に存在していた『ゴアヘッド』や『ブルドッグ』という服屋に通い、将来は洋服屋さんをしたいと思っていたことも。大学卒業後には、呉服と洋服の両方を扱うアパレル会社に新卒で入社した。いつか実家の呉服屋を継ぐ可能性を考えての選択だった。

店先に置かれた陶器の白熊は「守り神」。ある展示会に出店した際に一目惚れして購入した。

その会社で呉服部門に配属され、大阪・和歌山担当の営業マンとして、7年間あらゆる呉服店を巡った。業界の未来を嘆く店がある中で、夢を持ってチャレンジする店にも多く出会った。そんな呉服屋の先輩たちの姿に後押しされ、実家を継ぐことを決意。 2008年、30歳のときに敦賀へ戻り、「有限会社 なご呉服店」の3代目となった。

名子央さん。撮影に伺ったこの日は、地元の高校生から取材を受けていた。

そんな名子さんがヤンキー漫画好きとは少し意外に感じるだろう。しかし、ヤンキー漫画にハマったきっかけが「登場人物のファッションだった」というから納得だ。「学ランのパンツにピタピタのシャツを合わせたり、パーカーにダボダボのボトムを合わせたり。制服だけど制服じゃない、自由な着こなしがめちゃくちゃかっこいいんです。殴り合いはできなくても、ファッションは僕でも真似できますからね。ファッション誌よりも参考にしていました。ストーリーも楽しめて一石二鳥です」。

ヤンキー漫画と呉服、一見交わらなさそうなこの2つは、名子さんの人生において「ファッション」で結び付いていた。憧れは表層から深層へ。いくつものヤンキー漫画を読むうちに、誌面で繰り広げられるヤンキーたちのアツいストーリーにも憧れるようになった。

店内には反物がずらり

ヤンキーの世界はとてもシンプルだ。拳と拳の勝負、漢気、仲間がやられたらやり返す、ボスへの忠誠など、まさに仁義の世界。しかしどの漫画も、正直同じようなストーリー展開が多い。学校対抗の抗争や、仲間がやられると主人公が覚醒する設定などなど、かなりの高確率で展開されるお決まりのパターンがある。それでも、名子さんを含む多くの読者の胸を打つのはなぜなのか。名子さんが語る「ヤンキー漫画のアツいポイント」を紐解いていくと、ヤンキーたちの行動規範に武士の生き様のようなものを感じた。古くから日本で培われてきた精神に近いものが読者の心を掴むのかもしれない。そう考えると、着物のような日本固有の文化ともあながちかけ離れたものではないのかもしれない。

名子呉服店
1951年創業の呉服店。10年前に店舗を改装し、今のモダンな雰囲気の店に。4年前に3代目の名子央さんが社長に就任した。「着物のことならなんでもまかせてもらえるように」と、2年ほど前に同じ通りに「きものレンタル彩-irodori」をオープン。YouTubeチャンネル「なごちゃんねる」では、社長自ら出演し、着物の魅力を発信している。

千田書店の「ほんいち本棚 特設コーナー」では、名子さんの語る「ヤンキー漫画のアツいポイント」について、おすすめのヤンキー漫画3つと共に掲示しています。展示は9月9日ごろまで。ぜひ、店頭でご覧ください。

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