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中国──あの日、あの時

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旅行記まとめ
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#留学

内蒙古──変わる支配者、変わらぬ大地

内蒙古──変わる支配者、変わらぬ大地

 中国は共産党が指導する社会主義国家ということもあり、5月1日のメーデーを中心に大型連休が組まれている。多くの中国人はこの機会に旅行に出かけており、私も学生向けツアーで内蒙古自治区の草原と砂漠を訪れることにした。

朝4時、トラブルにて

 内蒙古は中国の北西部にかけて位置する広大な民族自治区であり、多様な自然が同居していることでも知られている。遊牧民族の残り香を感じる草原に、オリエンタルな空気を

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北京──34年目の初夏

北京──34年目の初夏

 北京、天安門広場。中国の歴史の栄枯盛衰を見守ってきたこの広場は34年前の6月4日、中国史にとって一番のタブーとなる殺戮の舞台になった。

 発端は胡耀邦総書記の急死に伴う名誉回復運動だった。名誉回復運動は多くの学生運動家に火を付け、学生内部での対立を産み出しながら、中国の民主化を求める大きな潮流へと変容していく(この辺りは安田峰俊氏の『八九六四』に詳しい)。

 中国の中央指導部はこの運動を、天

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新疆ウイグル自治区──祈りなき紅いオアシス①

新疆ウイグル自治区──祈りなき紅いオアシス①

 新疆ウイグル自治区。中国の中で最も西北に位置する行政区画で、少数民族のウイグル族が多数を占めるエリアだ。そして何よりこの中国の地方行政区は、人類史上あってはならないジェノサイド・民族浄化が今まさに行われているだろう場所としても知られている。5月も終わりが見えてきた頃、私はその新疆ウイグル自治区にいた。

シルクロードの汽車は往く

 北京から向かうにあたって、まず目指したのは首府が置かれているウ

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新疆ウイグル自治区──祈りなき紅いオアシス②

新疆ウイグル自治区──祈りなき紅いオアシス②

 新疆ウイグル自治区。中国の中で最も西北に位置する行政区画で、少数民族のウイグル族が多数を占めるエリアだ。そして何よりこの中国の地方行政区は、人類史上あってはならないジェノサイド・民族浄化が今まさに行われているだろう場所としても知られている。5月も終わりが見えてきた頃、私はその新疆ウイグル自治区にいた。

砂漠の星を駆ける

 ウルムチ駅午後10時。カシュガルに向かう寝台列車「喀什号」は夜の夕焼け

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ウイグル旅行を振り返って──中華民族のディストピア

ウイグル旅行を振り返って──中華民族のディストピア

 先日、noteでウイグル旅行記を前後編に分けて2篇投稿した。

 概ね4日間の旅行は私の抱いていた従来のウイグル観を大きく崩すと共に、一つの結論を導き出させた。つまりこの2023年のウイグル自治区(少なくとも主要都市圏)は、既に"従来の民族文化が全て浄化されたディストピア"なのではないかと言うことだ。これについて端的に述べていきたい。

①監視体制の弱体化・縮小化

 従来、ウイグル自治区のイメ

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雲南─麗しき"金三角"

雲南─麗しき"金三角"

 中国雲南省。中国国内で最も多くの少数民族が居住するこのエリアは、南方情緒を色濃く残す、中国でも異色の土地だ。
 北京市が40℃に迫ろうとしている6月の半ば、雨季の様相を呈する雲南省に私はいた。

北の首都から熱帯の中国へ

 北京市から飛行機で3時間、雲南省昆明市。省都にして一帯一路・中国=ラオス運命共同体の拠点にもなっているこの街は、流石というか中国の地方都市の中では比較的規模が多い印象を受け

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延安──革命の食都

延安──革命の食都

山奥の小さなこの街が、新中国建国につながる大きな原動力を育て上げたのか。西安から延安に向かう高速鉄道から見える景色は、思わずそう考えさせてしまった。西安を出た頃に見えた田園風景はすっかり険しい山々の稜線へと変わりつつあった。

革命根拠地として

 延安は建国の父である毛沢東が、国共内戦の最中に辿り着いた都市であり、中国共産党中央委員会が置かれ、彼はここで"革命家"としていくつかの主要な論文を書き

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