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なぜ『シン・仮面ライダー』は賛否が分かれるのかを考える

17日に最速上映が行われ、18日より全国公開された映画『シン・仮面ライダー』が、公開して早速賛否が分かれている。

真ん中がなかなかおらず、好きか嫌いかがはっきり分かれるほど両極端な作品になってしまった。
これは『シン・ゴジラ』はもちろん、『シン・エヴァンゲリオン』や『シン・ウルトラマン』のときにはなかった展開だ。

ちなみに筆者は大絶賛派。しかし一方で、評価が両極端に分かれる可能性は凄く感じた。

なので、今回は何故評価が分かれるようなことになってしまったのか。
そこについて自分なりに考えてみたいと思う。

容赦なくネタバレをしているので、未見の方は気をつけてもらいたい。











1.なぜ映像が見にくいのか

©石森プロ・東映/2023「シン・仮面ライダー」製作委員会

よく聞く声として多いのは映像問題。CGがカッコ悪いとか、画面が暗いとか、アングルやカットがどうだとか。

レビューにも書いたけど、それら映像の答えは「庵野秀明が捨てなかったノスタルジー」だ。

ノスタルジーは物語の展開よりも映像として映し出す方が視覚的で分かりやすい。
それ故に、映像の至るところに、意図的に50年前の雰囲気を再現させている。

たとえば高速移動のときに出てくる赤い線なんかは、変身ポーズが登場する前の、バイクで走って風を浴びながら変身するときに出ていた速さを表現する赤い線と似たものがある。

実はこのノスタルジーについては、製作発表のときから言っていた。
その動画も発見できたので、ちょっとそれを見てもらいたい。
ちょうどノスタルジーについて話すところから再生できるよう設定もしておいた。



2.庵野秀明の趣味についていけるかが試される

そして本作は、庵野秀明の作品愛が炸裂しすぎているとも言われる。

これはたしかにそうで、「庵野秀明の抱く仮面ライダー像」「そもそもの孤高のヒーロー・仮面ライダー」が庵野監督の中で一致して監督がライダーを好きでいて、さらに庵野監督の作風と合わさり、時代にも合致してこれになってるんだけど、そうであるが故に庵野監督の趣味嗜好が存分に出てしまっている。

これはもはや庵野監督と趣味が合うか否かのレベルになるほど表現されていて、アングルやカットなど、いつもの庵野演出も今回に関しては作品愛が伝わるが故に煩わしく映るのかもしれない。

そして『シン・ウルトラマン』のときもそうだったけど、いきなり開始20分目くらいの勢いでスタートしている。
さらにこれは『シン・ゴジラ』もそうだけど、登場人物のバックグラウンドが多く語られず、観る人に委ねられている。
このあたりの作風も、庵野秀明の作風というか趣向だと思う。

そして本作は、庵野監督が特に好きだった「石ノ森章太郎先生が描きたかった仮面ライダー」だと思う。
レビュー予習復習の記事でも書いているけど、この作品はTV版は映像方面で、物語自体は漫画版から踏襲されている。
だから孤独で孤高のヒーローであることが強調された物語になっていた。
TV版も芯にある孤高のヒーローであることは同じなんだけど、「仮面ライダーvsショッカー」みたいな単純明快なストーリーや、TV版のようなバトル展開を期待しているとついていけない可能性がある。
もしくは逆に、仮面ライダーに対する思い入れや知識がない方が楽しめる可能性もあるかもしれない。ただそれでもイチかバチかの賭けにはなるが。

なので、上記のノスタルジーに対する理解や庵野監督の趣向についていける相性のようなものは、いままでのシン・ユニバース作品の中でも最も試される作品になったかもしれない。



3.なぜ『シン・ゴジラ』は成功したのか

(C)2016 TOHO CO.,LTD.

そして本作はシン・ユニバースの最新作であるがために、『シン・ゴジラ』や『シン・ウルトラマン』と比較される。

特に1作目の『シン・ゴジラ』は改めて良かったなと、シン・仮面ライダーに対して否定的な声をあげる人から多く出ている。

それは何故なのか。
個人的には、庵野秀明が『ゴジラ』に対して思い入れがないことが非常に大きいと思っている。

庵野監督の好きなものといえば『仮面ライダー』をはじめ『ウルトラマン』『宇宙戦艦ヤマト』『機動戦士ガンダム』『美少女戦士セーラームーン』、永井豪、市川崑、岡本喜八etc...と、いろいろある訳だが、ゴジラについての話はほとんど聞いたことがない。

もちろん嫌いではないだろうけど、特に最初のゴジラは庵野監督も世代ではないため、仮面ライダーやウルトラマンほどの思い入れが無いのだと思う。

その思い入れの無さが好転したのが『シン・ゴジラ』。

『シン・仮面ライダー』や『シン・ウルトラマン』は、思い入れがあるが故に「あれもやりたい!これもやりたい!」となってしまい、特にシン・仮面ライダーは監督まで自分でやってしまったので、今回のような「ついていけない声」が多く出てしまったのではないだろうか。

一方『シン・ゴジラ』は、思い入れがないために落ち着いて自分の作風で時代に合ったメッセージ性を落とし込むことが出来たんだと思う。
分かりやすいところでいえば、ゴジラが形態を変えていく設定なんかはゴジラに思い入れがあったらたぶん出来ないだろう。

また『シン・ゴジラ』は樋口監督とのタッグということもあり特撮面もカバーされていて、さらにアニメ界の凄い人たちが結集していて、中でも脚本が始まる段階のときに神山健治さんが携わったのは、政治的な展開が目立っていたこの作品においてかなり重要なポイントだったと思われる。

『シン・仮面ライダー』も、孤高のヒーローと孤独が身近にある現代という点で非常に合致したメッセージ性を込めた作品になっていたと思うんだけど、どうやら庵野監督の思い入れの部分が不要と感じる人も多かったようだ。


最後に余談だが、筆者の個人的な詳しいレビューはこちらに書いているので、こちらもよければ読んでもらいたい。


また、予習と復習にオススメの作品についても書いてみたので、こちらも読んでもらえると嬉しい。
こちらは前半は未見の人に、後半は観終わったあとにオススメのものを書いている。

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