「地道な作業が質の担保に」不織布づくりに欠かせない設備の命綱となる「相棒」の存在
働く人にとって、日々扱う道具は「相棒」と言っても過言ではありません。
相棒とどのように出会い、どんな思い出を刻んできたのか。
長らく使ってきた道具に焦点を当てると、その人の個性やこだわりが滲み出てきます。
今回の「相棒」は、新北九州工業(株)の岡本伸司さんが使う隙間ゲージにスポットライトを当てました。
日の目を浴びない地道な作業で扱う道具は、世界で1つしかない「財産」を守るために欠かせない役割を果たしています。
均質な製品づくりに欠かせない必需品
ー「相棒」と出会ったきっかけは。
岡本
「ネットで購入して以来使い続けています。それまでは別のものを使っていましたが、インチで単位が記されていて、頭の中でミリメートルに換算する煩わしさがありました。実はそこまでこだわりがなくメーカーもわかりませんが、0.1㎜~1.0㎜までの5枚のゲージが連結で1セットになっているところが気に入っています」
ーどんな時に相棒は活躍していますか?
岡本
「不織布の生産に使うカード機に綿を送る際、ローラーのすき間が湿度や機械の振動などで変化して傾くことがあります。そのままだと綿を均等に送れなくなるため定期的に調整が必要です。この隙間ゲージでローラーの両端を測って水平かどうかを調べ、まっすぐになるように調整しています」
世界で唯一の設備を守るために必要な調整
ーそんな相棒にはどんな「個性」がありますか?
岡本
「0.1、0.2、0.3、0.5、1.0mmと厚みが違いますが、複数を組み合わせるとそれ以外の厚さでも測れて隙間の調整にマッチしています。以前使っていたものは1セットでなくバラバラで毎回の組み合わせが面倒だったので、セットになっているのが便利ですね。購入の際、手で握りやすい幅のものを選ぼうとした点は唯一こだわりました」
ー印象に残っている思い出を教えてください。
岡本
「ローラーの隙間が変化して異音がすると真っ先に使う道具なので、数々のトラブルを未然に防いでくれています。実際の調整はしなくても、この隙間ゲージを使って測る作業は1~2週間に1度の頻度でやっています。それでも、この5年間にローラーが外れたり、軸を支える部分が折れたりすることがありました」
ー頻繁なチェックが必要な程、カード機は繊細な造りなんですね。
岡本
「社内に導入して20年ほどになりますが、もともと布団の中綿を作る工場で使っていた機械や海外のパーツなどを組み合わせて自分たちでアレンジしています。機械を生産したメーカーも既に倒産しているので、世界で1つしかないオリジナルです。仮に新たなものを導入しようとすると1台で1億円ほどするので、こまめにチェックするようにしています」
手の感覚で測る難しさと数値で管理する大切さ
ーもし相棒が現れなかったら、どんな社会人生活になっていましたか?
岡本
「隙間ゲージで測る作業は面倒ですが、1つのものを扱い続ける大切さを実感しています。カード機自体が社内に1台だけなので、故障すると会社全体の生産が止まってしまいます。修理費も100万円単位でかかりますし、仮に新しい機械に切り替えると同じ品質のものが作れなくなります。だからこそ、地道な作業が製品の質の担保につながると思っています」
ーこれから相棒とどのように付き合っていきますか?
岡本
「隙間を測る作業は手の感覚に頼りますし、わずかな引っかかりを見抜く難しさがあります。ただ、大切なことはどんな人がチェックしても同じ基準を持つことです。製品自体がミリ単位で厚みの調整が必要になるので、数値で管理できる基準を他のメンバーと共有していきたいです」
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