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金属に魔法の仕上がりを。溶射技術で支える手仕事によるモノづくりの奥深さ

働く人にとって、日々扱う道具は「相棒」と言っても過言ではありません。
相棒とどのように出会い、どんな思い出を刻んできたのか。
長らく使ってきた道具に焦点を当てると、その人の個性やこだわりが滲み出てきます。

今回の「相棒」は、第一化工(株)の面出翔さんが扱う溶射ガンにフォーカスしました。
特殊なモノづくりでの作業に欠かせない道具は、大きな構造物の耐久性を長期間にわたって保つために重要な役割を果たしています。

《プロフィール》面出翔(めんで・しょう)
 福岡県立小倉工業高校卒業後、2007年に第一化工(株)に入社。製造、営業など業務を経て、2018年から代表取締役。経営全般を担いつつ、現在も時折現場に立つこともある。プライベートでは幼少期からバス釣りを趣味としており、現在も休日には息抜きを兼ねて家族とともに出掛けている。福岡県出身、1987年生まれ。



大型の構造物にコーティングの魔法をかける「相棒」の存在

重量感のある溶射ガンを使って亜鉛やアルミニウムを吹き付ける作業時の手

ー「相棒」と出会ったきっかけは。
面出
「この会社に入ってすぐに先代である父から譲り受け、製造の現場に立ち始めた頃から使っています。溶射ガン自体の重量が約3kgあり、重みのある長いホースを腕に巻きつけながら使うため慣れるまでは丸1日使い続けると腕がパンパンになっていました」

ーどんな時に相棒は活躍していますか?
面出
「橋梁や建造物、プラントなどに使われる施工物に対し、この溶射ガンを使って粒子状の亜鉛やアルミニウムなどを吹き付けて100ミクロン単位の皮膜を形成させています。皮膜によって長期間にわたってサビを防ぐことができますが、ガスを熱源として溶射をする際に生じる炎は約2000℃の高温になるため作業時には細心の注意が必要です」


複雑な形状の構造物ほど手作業による施工が生命線に

面出さんたちが扱い続けてきた海外メーカー製の溶射ガン

ーそんな相棒にはどんな「個性」がありますか?
面出
「毎日のようにメンテナンスをしても、作業中に粒子が詰まって予期せず不具合が生じるので仕事が全然進まないんですよ(笑) 国内で出回っている溶射ガンの大半が海外メーカー製のため、メンテナンス用の部品を手に入れるのにも苦労することがあります。それでも使い慣れたものなので、他のメーカーのものに切り替えず使い続けています」

ー印象に残っている思い出を教えてください。
面出
「均等な皮膜を作るには、施工物までの距離と吹き付ける際のスピードが重要になります。縦方向、横方向に吹き付けるピッチの感覚でそれぞれの個性が出ますが、コツをつかむのに苦労しました。ただ、溶射によって大きな構造物でも長期間にわたってさびや腐食を防げる強みを知り、まだまだ知られていないこの技術を広げていきたいと意識するようになりました」

ー手がける施工物によって作業の違いなどはありますか?
面出
「社内にも自動で溶射する設備を取り入れていますが、複雑な形状の施工物になるほど溶射ガンによる手作業が欠かせません。大きな構造物の場合は施工現場に赴いて作業することもあります。だからこそ溶射ガンが必要になりますし、事故を起こさないためにも日頃からのメンテナンスが重要です」


ニッチな分野で新たな可能性を広げる取り組み

面出さんは溶射の特色を「一度施工するとほぼメンテナンスフリーとなる点が強み」と語る

ーもし相棒が現れなかったら、どんな社会人生活になっていましたか?
面出
「家業でもあったので、学生の頃から他の業界に進むことはほとんど考えていませんでした。父方、母方ともに商売をする家系だったため、自然とそうした考えに行き着いたのかもしれません。一方で溶射はモノづくりの中でもニッチな分野であり、家業でなければ今の仕事にも溶射ガンにも出会わなかったと思います」

ーこれから相棒とどのように付き合っていきますか?
面出
「同じ金属のコーティングでも、溶射は塗装やめっき処理と比べて知られていない部分がありますが、新たな技術や設備も広がってきています。そうしたものも社内に取り入れながら溶射の認知度を高め、可能性を広げていきたいです。もともと『鉄の街』と言われ、モノづくりの盛んな北九州の土地柄を生かしてこれからもさまざまな場面で貢献したいと思っています」


《今回紹介した面出さんが働く会社はコチラ》
【会社名】第一化工株式会社
【本社】福岡県北九州市八幡西区築地町21-20
【創業】1965年
【事業内容】鋼構造物などに関する溶射、ブラスト、重防食塗装などの施工
【HP】http://www.daiichi-kk.com/


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