「図面通りに仕上がっている!」計測の仕事を通じて知ったものづくりの職人技
働く人にとって、日々扱う道具は「相棒」と言っても過言ではありません。
相棒とどのように出会い、どんな思い出を刻んできたのか。
長らく使ってきた道具に焦点を当てると、その人の個性やこだわりが滲み出てきます。
今回の「相棒」は、産機エンジニアリング(株)の白石亮也さんが扱う3D精密測定器にフォーカスしました。
未経験だった計測業務に関わるようになり、設計業務だけではわからなかったモノづくりの奥深さを感じるようになっていきます。
高価な機器に最初は恐る恐る…
ー「相棒」と出会ったきっかけは。
白石
「入社から10年目までは設計の仕事をしていましたが、グループの異動で計測の仕事を兼務することになってから扱い始めました。同じタイミングでこの機器が会社に導入されましたが、高価なものなので最初の頃は『扱いたくないな…』と思いながら恐る恐る使っていました」
ーどんな時に相棒は活躍していますか?
白石
「製品検査や設備の摩耗具合の調査、既に図面がない設備や装置の部品を作ったり、修繕したりするリバースエンジニアリングの案件などで使います。さまざまな角度から撮影して合成することで、車1台程度の大きさのものであれば0.1ミリ程度の誤差に収められます」
シンプルな構造ほど問われる計測スキル
ーそんな相棒にはどんな「個性」がありますか?
白石
「撮影の順序や計測ポイントとなるシールの貼り方が重要です。きちんと手順を踏まないと、撮影したデータ同士を合成した時に精度が悪くなります。高い精度で測るものなので、少しでも振動があったり、手で触れたりするとすぐにエラーの表示が出る繊細さもありますね」
ー印象に残っている思い出を教えてください。
白石
「直径300ミリ、厚さ10ミリの円盤の計測することがありました。ある程度の大きさで凹凸があるものだと撮りやすいのですが、薄いので穴が3つあるだけのシンプルな構造だったので、モノを反転させて撮ってもデータをつなぎ合わせられなかったんです。その時はモノを立てに置いたり、斜めにしたり何度もやり直しましたね」
ーシンプルなモノほどテクニックが必要になるんですね。
白石
「現場に行くとモノが大きいので撮影する量は多い分、やりやすさもあります。それがシンプルな構造だと『こんなに撮れないのか…』と驚きました。ただ、手計測だと測り漏れしてしまうことや物理的に測れない部分もあるので、この機器があることで『データがあれば後は何とかできる』と安心感があります」
計測を通じて知ったものづくりの凄さ
ーもし相棒が現れなかったら、どんな社会人生活になっていましたか?
白石
「設計の仕事だけでは『図面通りに本当に出来ているのかな』とイメージが湧かない部分もありました。現場に行って実物を測る仕事をしていると、要求以上の精度で仕上がりに『ちゃんと公差に収まっている!』と驚くことがあります。リアリティのない図面から実物が出来上がる過程が頭の中でつながり、職人さんの腕の凄さを改めて実感しています」
ーこれから相棒とどのように付き合っていきますか?
白石
「高価で精密なので大切に扱うのはもちろんですが、現場では油で汚れてしまうことがあります。汚れた部分を拭いたり、レンズをエアーで飛ばしたり、最低限のことは欠かさずやりたいです。社内で計測を出来る人がまだ少ないので、若い人を育てる環境を作れたらと思います。知っていることが増えると見方も変わるので、そんな形で仕事を好きになってほしいです」
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?