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 さぶ 著:山本周五郎

  この作品は高校生、大学生の頃、読みかけて読み切れなかった本を図書館で借りて読んでみた。

 職人見習いの栄二とさぶ、さぶは愚図で鈍間で頓馬でやり切れない程、修行場で冷遇されてた。糊作りしかさせてもらえない程だった。けれど栄二はそのお前の糊がなきゃ俺たちの仕事も侭ならないのだから日本一の糊職人になって俺を支えてくれよと宥める。すみよしと言う店のおのぶに恋したさぶ、しかしおのぶの方では栄二に気があって三角関係だった。

 綿文と言うお得意様のお手伝いのおすえが好きだった栄二、おすえの方でも栄二が好きだった。それで、栄二の袋に金襴の切れが入っていた事で栄二は盗人扱いされ店からも暇を出されてしまう。どうにか誤解を解きたくて、綿文に行くもご主人には会えず、使用人にボコボコにされて帰されてしまった。栄二は自分の境遇と綿文、芳古堂を憎んだ。目に物見せてやると心に誓い、一切口をつぐみ、寄場人足に送られて、そこで暮らした。

 その寄場人足で人の温かみと情に触れ、九死に一生を得てから、栄二の方でも憎む気持ちで事に当たろうなどと言う気持ちは失せていった。

 その間、おのぶにおすえ、さぶが何度も面会に訪れてくれていた栄二はしゃばに出てさぶを頼った。二人で仕事をして、やっと大口の仕事を江ノ島の当人から預かり、その仕事に精を出した。さぶは母親の危篤で里に帰ってた時分にさぶの糊の瓶を覗き込んだ栄二はびっくりする。あの金襴の切れの犯人はさぶだったのだとだからこんなに俺に尽くしてくれたのかと早合点しておすえに言うと、そうじゃないの栄二さん、それをやったのは私なのよとおすえは白状する。どうしてもあなたと一緒になりたくて綿文の娘さんと結婚させないように私が仕掛けたものだったのよと白状し、現にこうやって結婚できたじゃないかと栄二もおすえを責めなかった。

 さぶが里から帰って栄二の家に来た所でラストだった。こう言う物語だったのかと合点がいった。特に寄場人足として栄二が大人になる為に必要だった人足同志の出会いが掛け値なしに美しい。栄二を慕うさぶが愚直な程、栄二の身に起きる全てがさぶを通して痛切に迫って来るのだった。物語のタイトルはさぶだが、栄二が主人公のお話だろうと思う。

 以上


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