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 ぎょらん 著:町田そのこ

 人が死ぬ際に残す珠「ぎょらん」。噛み潰せば、死者の最期の願いがわかるのだという。地方都市の葬儀会社に勤める元引きこもり青年・朱鷺(とき)は、ある理由から都市伝説めいたこの珠の真相を調べ続けていた。「ぎょらん」をきっかけに交わり始める様々な生。死者への後悔を抱えた彼らに珠は何を告げるのか。傷ついた魂の再生を圧倒的筆力で描く7編の連作集。文庫書き下ろし「赤はこれからも」収録。

 ぎょらん

 夜明けのはて

 冬越しのさくら

 糸を渡す

 あおい落ち葉

 珠の向こう側

 赤はこれからも

 解説:壇蜜

 517ページ読了。ちょっと情報量が多過ぎて、どこに誰が出て来て誰がどうだったのか一回では消化しきれて無い部分が多々ある。それぞれに出自や物語は違うのだがラストに向かって絡まり合って最初の方に読んでいた人が出て来るのだ。一部の隙も見逃せないエンターテイメントになっている。どの話の誰だったかなと前の方を見て確認しながら読み進める、そんな感じだった。

 主人公は親友が死にそのぎょらんを食べてしまいその憎悪の感情に苛まれ、ニート状態の引きこもりになった朱鷺青年、妹は華だ。ぎょらんを扱ったマンガと携帯小説が出て来るのだがその作者もぎょらんを食べて人生が変わってしまった人だと言う。そしてぎょらんの存在を打ち明け合う掲示板があり、葬儀社に就職した朱鷺はみやげだまと言って良い葬儀が出来た時にだけ現れると言うぎょらんとその漫画作者の(朱鷺より先にぎょらんの存在に気づき研究をしていて漫画を執筆した人・故人)奥さんに出会い、ぎょらんの秘密を知るのだった。

 そして、華と朱鷺の母親もお亡くなりになり、またぎょらんに触れてと言うお話なのだ。結局、ぎょらんが死者の魂なのか生者の希望なのか確たる説明は避けて描かれ、謎めいた終わり方をしている。

 コンビニ兄弟テンダネスを3冊読んで町田そのこさんのファンになった私だが今回は話の都合上、人が何人もお亡くなりになられる。修羅場と葬儀社の話でもあり、読み進めるのは一苦労だった。決して明るい話だけでは無い、町田そのこさんのダークサイドを垣間見た次第である。でも、通底して窺える人間愛のような慈悲深い視点は保証する。悲しいだけじゃない、希望も描いてくれているお話だ。

 文庫の際の書き下ろしではコロナと震災の描写もあり、また一家族の別れと魂の再生を描いている。解説が壇蜜さんなのは葬儀関係の専門学校を卒業されたタレントさんだからだろう。解説はそんなに響かなかったがなかなか見た事のある芸能人が解説を書いている本なんて読んだ事が無かったから多少びっくりした。

 今回はうまく書評が書けない。それほど濃密で計算された作品だった。私は読書体験としては濃密な時間を過ごせたが計算された部分は頭がついていかなかったと言うのが正直な感想だ。

 まだまだ町田そのこさんの作品はある。他にはどんな作品を描いているのだろう。楽しみだ。

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