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 4TEEN 著:石田衣良

 ナオトとダイとジュンとテツロー、月島に住むありふれた中学生の青春群像劇だ。道順や土地勘などの情景の描写は一度住んでみないとわからないくらいリアルに描き込まれている。作家さんの凄いなぁと思う所だ。

 主人公はテツロー。ウェルナー病と言う病を抱えたお金持ちのナオト、大柄の貧乏なダイ、頭の良い皮肉っぽいジュン、そして何の特徴も無い平均的なテツローの仲良し四人組がそれぞれの仲間を思い奮闘する。

 『びっくりプレゼント』では、ウェルナー病のナオトの誕生日に最高のプレゼントをしようと、ダイとジュンとテツローで考える。ナオトはお金持ちだから大抵の物は手に入る。だから渋谷に出掛けて、援助してくれる女子高生を中学生が探し回るのだ。1○9でタバコを吸っていた女性に声をかけ、3人のお年玉全部つぎ込んでお願いするのだ。ナオトは甘いひとときを過ごせるのかと言うお話。

 『月の草』はテツローが不登校になった生徒のルミナと学校で出たプリントを持って行く度に近づいて行く淡い恋を描いている。ルミナは自分の名前が嫌だと言うし、無理なダイエットとリバウンドに苦しむがそんなルミナを放っておけないテツローが愛しかった。

 『飛ぶ少年』は空気の読めない不人気な生徒のユズルが放送委員になっていつかはテレビに出るんだと、おかしな催し物ばっかりしてしまう話。調子っぱずれのユズルは空だって飛べると言い出してしまい、3階から飛んで足の骨を折ってしまうのだった。

 『十四歳の情事』はジュンが出会い系サイトで出会った人妻がDVで悩んでいるのを4人揃って救う話。二十歳も離れてるジュンに人妻は男としては見れないと、キスしかしてもらえないのだった。

 『大華火の夜に』は隅田川の花火大会を見る為に穴場のスポットになっている廃工場に潜入するとそこには先客が居てその人はお訪ね者になっている老人だった。死期が迫っている事を自覚している老人を4人は通報する事無く花火大会まで一緒に過ごすのだった。

 『ぼくたちがセックスについて話すこと』はカズヤと言うダイの事を好きなホモセクシャルな男の子が4人に混じって帰っていいか?と付き纏って来る。しかし、そのカズヤは学年一の美女のイズミに告白されるのに断ってしまう。カズヤはこっちなの私とオカマのポーズをしてカミングアウトするのだ。しかし、そこからカズヤは一気に人気者になり、バレンタインのチョコレートはダントツの数で女子にモテてしまうのだった。

 『空色の自転車』はダイの父親が死んでしまう悲しい話だった。ダイの父親は酒癖の悪い暴力男だったが寒い日に外で水を掛けただけで死んでしまうのだった。それは糞便を漏らしたからダイがした事だった。でも、ダイがいつもママチャリでみんなはマウンテンバイクだった事で欲しい物は無いか?と聞かれて、こんな自転車が欲しいと言っていたダイの思うままの特注の自転車が死んでからプレゼントされるのだ。あんな親父でも良い所もあったんだなとダイはいっその事憎ませ切って欲しかったのにこんなの無いよと落胆するのであった。

 『十五歳への旅』は4人で二泊三日の旅行をする。木更津と言っていたが実は新宿に行って夜の街のドキドキを味わおうとするのだった。アダルトショップに入り、ストリップを観て、クラブへ。そこで同じ家出少女の二人組に出会い、二人の悩みを解決してあげて旅行は終わりを迎える。この作品の最後は誰にも言って無い事をみんなで言い合おうと言う事だった。そこでそれぞれがそれぞれに語り、テツローの話しを終えてエンディングだった。

 4人にプラスαで現れる登場人物との顛末を日常的に切り取って行くだけのようだが、石田衣良さんの描写はどこか憎めない主人公達の友情を如実に立ち昇らせている。石田衣良さんはこの作品で直木賞を受賞したようだ。4人のその後については読者に委ねられている。きっと違う別々の高校に進学し、あの頃のようには会わなくなるのだろうし、ウェルナー病のナオトは30を過ぎて生きてる確率は低いのだ。それでも、この4人の絆はテツローのおかげで一つの本にまとまって多くの人の心に残る物になったのだと思いたい。14歳、サッカーの事しか考えてなかった私とは違う青春がここにあるのだった。


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