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愛媛県西予市|自治体が行うオフィス改革とペーパーレス化、会話量増加や効率33%アップへ

愛媛県西予市(せいよし)は、愛媛県の南西部に位置する人口約35,000人の町です。

愛媛県西予市の自治体が取り組んだオフィス改革・ペーパーレス化の事例をご紹介します。


過疎化が進む町

愛媛県西予市では、少子高齢化が進み、人口減少によって過疎化が進んでいました。愛媛県南部の広域流通拠点として発展が期待されていましたが、人口減少が進んだ結果、1990年から2005年の15年間で人口が13.4%減少し、市域全体で過疎地域に指定されています。

経済についても規模は減少傾向で、元々は農業や製造業が盛んでしたが、人口減少や過疎化により財政状況も厳しい状況でした。

これらの問題が自治体職員の働き方へ影響を及ぼしていました。財政状況が厳しくなると、多くの人を抱えることができないため、職員の数が削減されていきます。しかし、社会情勢の変化などにより職員が対応する業務自体は多様化していました。

つまり、職員の数は削減される一方で、業務量は変わらないどころか増えているので、一人ひとりの職員の業務量が増え、業務不可が高くなるということです。
すると長時間勤務にも繋がってしまうため、働き方を改革すべく、「オフィス改革モデルプロジェクト」が立ち上がりました。


ICTツールを活用したオフィス改革とペーパーレス化

従来のアナログ業務を改めて、ICTを活用した業務のデジタル化を推進しました。具体的に行われたオフィス改革は以下のとおりです。

■オフィス環境の改革
・フロアと各会議室に無線LAN環境を構築
・チームアドレス制を採用
(自席を持たず自由に働く席を選択できるオフィススタイルをフリーアドレスと呼びます。チームアドレスは、西予市独自のフリーアドレス制度で、基本となる課の島は存在しますが全員分の席はないというスタイル)
・PCとは別にモニターを配備し1人で2つのモニターを使用
・大型モニターの導入

■会議/議会運営の効率化&ペーパーレス化
・書類をペーパーレス化し、必要書類は印刷せずにデータで配布
・タブレットを全議員へ配布しデータで情報を共有
・ノートパソコンの持ち込みを可能へ
・遠方の支所や外部との打ち合わせにWeb会議を導入

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※画像:新・公民連携最前線(日経BP総合研究所)


オフィス改革やペーパーレス化については、まず始めに一部の部署をモデルとして取り組みを始め、そこから横展開していきました。職員によるワークショップを行い「職員が望む働き方」について議論し、そこで出た意見をまとめて4つの方針を策定しました。

1)会議やコミュニケーションを機動的に行いたい
2)集中できる場所で作業をしたい
3)市民とのコミュニケーションが気軽にできる場所を作りたい
4)リラックスできる場所で休息したい

この方針を踏まえて、オフィス変革を行ってきました。

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※画像:公益財団法人 全国市町村研修財団 全国市町村国際文化研修所HP


定量的な効果

オフィス環境や会議運営の変革、タブレット配布に伴うペーパーレス化によって、定量的な効果が表れました。

◯ 職員の会話量が約2.2倍に増加
 (課内だけでなく、課を超えたコミュニケーションも増加)
◯ 職員は、デュアルディスプレイの使用により約33%効率アップを実感
◯ 情報の電子化で 1 人当たり月に3.2時間の効率アップ
◯ 議会のコピー使用料が半減、FAX使用料は1 /10以下に削減

また、実際に訪れた市民の方からもプラスの意見が出ていました。

「明るくスッキリしていて良いと思う。来やすい雰囲気になった。」
「以前はなかった受付がありがたい。」
「開放的で訪れやすい雰囲気になった。」
「課が少しわかりづらくなったが、オープンで声はかけやすくなった。」


ポイント

愛媛県西予市では、各課から推進員を選出し、定期的に推進員会を開催し、各課の情報共有を行っていました。

このようにオフィス環境を整えて終わりではなく、継続して取り組みを行いながら、環境の向上を行っている点がポイントです。

人口減少は今後益々深刻化していくことが目に見えているため自治体職員の業務についても、より効率化していくことや、単純作業ではない役所内外でのコミュニケーションなどに時間を割いて付加価値の高い業務を行っていくことが求められてきます。そのため、継続的に改善を続けていくことが重要です。

こういったシステム化・ICT導入は構築したら一定の達成感が得られ、やり遂げたように思ってしまうこともあります。(特にシステムベンダーにおいては、システムを構築して納品したらお金をもらうので納品がゴールになりがちです)

しかし、オフィス環境を整備することや紙を廃止することは第一歩目ですので(その第一歩目が非常に難しくもあり重要なのですが)、継続的に取り組んでいけるように、各課から推進員を選出して定期的に打ち合わせを開催していることは、簡単なことのようにみえますが、非常に重要なことです。

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