![見出し画像](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/141371031/rectangle_large_type_2_3d5c3223203b4c4b6d9719b3150cb271.jpeg?width=800)
ご免侍 七章 鬼切り(二話/二十五話)
設定 第一章 第二章 第三章 第四章 第五章 第六章 第七章
前話 次話
あらすじ
ご免侍の一馬は、琴音を助ける。大烏城に連れてゆく約束をした。祖父の藤原一龍斎は、一馬を刀鍛治の鬼山貞一に会わせる。貞一の娘が母親だった。そして母は殺されていた。
二
どんな状況でも腹はへる。一馬は板敷きに座ると粗末な碗をとって雑穀を口にする。白米になれた一馬は、口をゆがめた。
(こんなものを食って力になるのか……)
隣で水野琴音が、食事をしている。女性と一緒に食べていると、なにか心があたたかく感じる。
(俺は琴音に、母の姿を求めているのか……)
やさしくて、きびしくて、自分を大切に思ってくれる異性。なぜか琴音に、欲情を感じないのは母として見ているためか。
「あたしも食べるよ」
どんっと、月華が空いている隣に座ると箱膳を引き寄せて、真横で食べ始めた。
「一馬、たべさしてあげようか」
ほとんどくつきそうな近い位置から、月華が漬物の大根を差し出す。
「うん、いや自分で食べる」
「いいじゃん、あーんして」
断る事も考えたが騒がしくなるのは目に見えている。黙って口をあけると乱暴につっこまれた。
「げっほげっほ」
「大丈夫ですか、一馬」
琴音が、湯飲みの白湯をさしだす。そっと手に取り飲み干した。月華が、対抗意識むきだしで湯飲みを一馬の頬にくっつける。
「白湯なら私のも飲んで」
「カンベンしてくれ」
「本当に仲がよいですな、わはははははっ」
さわがしくなると、さっきまのでざわつきがおさまってきた。
(俺は本当に弱い、母の死はどこかで覚悟していたはずだ……)
しばらくすれば忘れる、母が死んだ事は悲しいが……しかし殺されたと聞いた。敵討ちはしたのだろうか、殺された理由もわからない。
「一馬殿、よろしいですか」
「なんですか」
ぬっと立ち上がると、六尺をこえる雄呂血丸は、やはり熊のようにでかい。ちょいちょいと手まねきすると外に出た。一馬は飯の残りをかっこむと立ち上がるが、月華が甘えるように腕にしがみついていた。
![](https://assets.st-note.com/img/1716287489352-SusIDt32Nc.jpg?width=800)
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?