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ご免侍 七章 鬼切り(十六話/二十五話)

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あらすじ 
 ご免侍の一馬かずまは、琴音ことねを助ける。大烏おおがらす城に連れてゆく約束をした。祖父の藤原一龍斎ふじわらいちりゅうさいは、一馬を刀鍛治の鬼山貞一おにやまていいつに会わせる。貞一ていいつの娘が母親だった。そして母は殺されていた。鬼山貞一おにやまていいつから、母は生け贄にされたことを知る。生け贄の場所は大烏おおがらす城だった。


十六

権三郎ごんさぶろう、ちょっと来てくれ」
「なんでしょう」

 刀鍛冶の鬼山貞一おにやまていいつが、元山賊の権三郎ごんさぶろうを、ちょいちょいと手まねきする。

「おぬしは猟師だそうだな」
「へい」
「ここにわしが作った新型銃がある」

 渡された火縄銃は奇妙な形をしている。火縄の真ん中に回る筒が取り付けてある。

「この筒は、なんですか?」
「この筒に早合はやごうをつめる」

 リボルバーと同じ原理だ。ただ炸薬は金属ではおおわれていない、竹で作られていた。横についている小さなレバー下げると、筒が回る。

「一発撃つ、そして回す」
「これは……連続で撃てます」

 権三郎ごんさぶろうは、とても大事そうに新型の銃を受け取る。

隼丸はやぶさまるとわしは名付けた、大事に使え」
「ありがとうございます」

 権三郎ごんさぶろうは、涙を流さんばかりに喜んでいる。鬼山貞一おにやまていいつは、早合はやごうの作り方を教えつつ、筒は取り外して普通の火縄銃にもなると細やかに伝えた。

「その余った、火縄銃をわしに貸してくださらんか」

 雄呂血丸おろちまるは、権三郎ごんさぶろうの火縄銃を受け取ると、使い方を教えてもらう。

「男は本当に武器が好きだね」

 忍者の露命月華ろめいげっかは、それを横目で見ながらつぶやく。一馬は、祖父の亡きがらの前で微動だにしない。

琴音ことね、ちょっと来て)

 月華げっかは、琴音ことねを外に連れ出す。琴音ことねは、泣き顔のままで眼が赤くはれていた。

「あんた、これからどうする……」
「……お城に行きます」
一馬かずまが、あんなじゃ使えないよ」
「なんとか一人で……」
「馬鹿いいな、散華衆さんげしゅう四鬼しきがどれほど強いか判るだろ」
「父からの言いつけですから」

 月華げっかは、子供の頃に誘拐された身の上だ、父からの命令がいかに絶対か判らない。

#ご免侍
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