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ご免侍 八章 海賊の娘(三話/二十五話)

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あらすじ 
 ご免侍の一馬かずまは、琴音ことねを助ける。大烏おおがらす城に連れてゆく約束をした。母方の祖父の鬼山貞一おにやまていいつと城を目指す船旅にでる。


「おい、孫をいじめるな」

 祖父の鬼山貞一おにやまていいつが、笑いながら手招きをしている。あわててその場を後にするが、脇腹の激痛がやばい。もしかして骨が折れたか?

「女にもててうらやましいの」
「うらやましくないです、痛い……」
「もし折れていても自然治癒しかないぞ、板でもまいとけ」

 笑いながら漁村を歩いて行くと、山のふもとに大きな屋敷が見える。かなり大きな屋敷は大名屋敷のように立派に感じた。

「村上水軍の根城ねじろじゃ……」
「海賊ですか」
「ああ、わしの親戚でもある」
「……」

 大きな門を通り、立派な玄関で待っていると、年の頃は十六くらいか美しい着物姿の精悍せいかんな顔の娘が出てきて板の間で座っておじぎをした。

村上栄むらかみさかえと申します」
「これはご丁寧に、わたしは刀鍛治の鬼山貞一おにやまていいつ

 祖父とともに頭を下げる。

「横におるのが、桜の子供、わたしの孫の藤原一馬ふじわらかずま
「よろしくお願いします」

 また頭を下げて姿勢を正すと、村上栄むらかみさかえが値踏みをするように見つめている。

「お強いのですか」
「私は……強くはありません」
「弱いのですか」

 立て続けに質問をされると少しだけむっとする。

「それなりに剣は使えます」
「判りました、お手合わせをお願いします」

 すっと立つと用意したかのように、下働きの女が大きな槍をもってくる。その先は三つ叉になっていた。そのまま無言で庭先に出ると槍を立てて、こちらを見ている。

貞一ていいつ殿……、何がはじまってるのですか」
「わからんが相手してやれ」

 興味なさそうに耳の穴をほじっている鬼山貞一おにやまていいつに、あきれながらも流れでしかたなしに村上栄むらかみさかえ対峙たいじする。

「なにをすればよろしいですか」
「それでは、殺し合いで」

 槍がすさまじい勢いでくりだされた。

#ご免侍
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