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ご免侍 九章 届かぬ想い(八話/二十五話)

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あらすじ 
 ご免侍の一馬かずまの父が、散華衆さんげしゅう隠形鬼おんぎょうきだと暴露された。一馬かずまは、連れさられた琴音ことねを助けられるのか。


「城の城主を倒す方法……」

 一馬が一人で部屋に座って考えているが思いつかない。単身のりこんで敵を倒すなんて事はできない。護衛は侍だ、一馬が戦ってきたような素人の小悪党や異形の技術をもつ忍者とは異なる。道場で修行して剣一本で敵を倒す手練てだれだ。

(やはり忍者に頼むか……)

 露命月華ろめいげっかに頼るのは、自分でも何か違うと感じている。自分が頼まれた仕事を他の誰かにやってもらうのは、責任放棄にも感じた。

「一馬、どうした」
「腹でも痛いの」

 気がつくと村上栄むらかみさかえ月華げっかが正座している。

「居たのか」
「なんかやつれてるね」

 月華げっかが心配そうに近寄るとさかえが、一馬の手首をつかんで胸にもっていく。朝の感触を思いだす。

「私が殿様を倒してやるよ」
「一馬、こいつ何もわかってない」
「わかってないって何が」

 一首即発、下手すると血を見る修羅場だ。

「まてまて、俺も方法がわからない。大人数で城を攻めても落城しないだろうし、そもそもそんな軍勢は動かせない」
「外に出るときに襲うとか」
「そんな都合良くは出てこないだろう」

鉄甲船てっこうせんが奪われた事を知っているし、父がなにもかも話している筈だ)

 こちらの手の内は、ばれている、油断はしない。

「ねぇ一馬、水野琴音みずのことねに親戚はいないのかな」
「そうか城の情報を得られるならば、勝てるかもしれぬ」

 なぜか月華げっかが、くねくねと普段とは異なる仕草で甘えてくる。これは嫌な兆候だ、村上栄むらかみさかえの眼が険悪になる。

「んん、みな話を聞いてくれ」
「何」
「あらたまってどうしたの」
「お、俺は……側室をもってもいいと思う……ごにょごにょ」
「え、聞こえない」
「なんだって、もう一回」

 二人の少女から強烈な殺気を感じた。

#ご免侍
#時代劇
#届かぬ想い
#小説


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