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雑多な怪談の話

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#怪談

怪談 王手【#ボケ学会のお題】

 カッっと光るとギザギザの稲妻が眼に焼き付く、遠くでドーンと音がした。 「遠いな」 「そうですな」  法師と侍が縁側で将棋を指す。雨がふりはじめるともう暗い。雨戸を開けて将棋を続ける。 「蒸すな」 「蒸しますな……」  法師は眼が見えないが将棋盤の大きさと、駒の手触りだけで勝負ができた。 「勝てばおぬしの娘をもらうぞ」 「勝てますかな」  侍は法師の美しい娘が欲しかった、法師の将棋好きを知って策略を立てる。眼が見えないならば、駒をごまかせる。  十数手もすると駒

SS 秘湯【一方通行風呂】#毎週ショートショートnoteの応募用

 ――世界はモノクロだ  ――雨が激しく屋根を叩く  ――うす暗い部屋で身動きをしない  壊れかけた板戸が、ズッズッと動くと男が入ってくる。 「ひどい雨だな」  暗闇にいる私は驚かせないように顔をだす。 「いらっしゃいませ……」 「風呂に入りにきた」 「はい、こちらです」  まずは足湯、ぬるく白く濁った湯で汚れをとる。  砂湯に案内して体を埋める。体の中までじっくりあたたためる。  ――誰もいない小屋  ――ただ静かに客によりそう  ――眼をつむる客は…… 「客

SS 約束【#雨の七夕】#青ブラ文学部参加作品(1400文字くらい)

 川が増水したのか水が濁っている。思妤は、ものうげに川面を見つめる。雨の七夕は、湿気も多く憂鬱に感じた。 「思妤、することがないなら針仕事でもしな」 「あぃよ」  ごうつく婆は、遊郭の女が暇そうにしているのが許せない。渭水の対岸は長安で、船で遊びに来る客が多く繁盛していた。 (あいつ来るって言ったのに……)  星宇は、思妤のなじみの客で、牛の売り買いで財をなしていた。若く聡明な彼は、彼女を見受けをすると誓いを立てた。 (嘘の約束なんてしなくても、金もってくれば……)

妖怪笑い話 鬼が笑った【#ボケ学会のお題】(1000文字弱)

「こんなこともできないの」  掃除洗濯家事料理、何をしても姑は機嫌が悪い。夫の母親と同居する事になったのは、彼のお父さんが死んで遺産が入ったためだ。一人は不自由だと家に転がり込んできた。 「もういいから」  手で猫を追い払うようにしっしっと手を泳がせる。はじめは仲良くなろうとしたが、姑は変わらなかった。 (遺産のため、遺産のため……)  呪文のように自分に言い聞かせる。いずれ体が動かなくなり施設に入れるまでは、おとなしい妻の演技をしよう。そんな毎日でも、姑が笑う事も

SS 田舎の池【ラムネの音が】シロクマ文芸部参加作品 (940文字位)

 ラムネの音がする。かすかで小さくて聞こえない。栓を抜くとビー玉が容器の中に落ちてくるりと回る。神秘的な蒼い瓶をいつまでも、あきずにながめる。  ラムネの飲み口に耳をよせるとシュワシュワと小さくつぶやくような音が聞こえた。 「――なにかしゃべってるみたい……」 「よう子ちゃーん」  遠くで母が私を呼んでいる。池のほとりでラムネを飲むのが好きだ。池の蒼い色で心がやすらぐ。田舎の舗装されていない農道を、雑草を踏みながら家に戻ると母がにこやかに笑っていた。 「お父さんがおみ

妖怪笑い話 ロウソク【#ボケ学会のお題】

♪お囃子  舞台に男が二人あらわれる。 「よろしくお願いします」 「貧乏神です」 「死神です」 「二人あわせて、生き地獄!」  舞台で頭をさげるが客席はしんと静まりかえっている。 「いやー私たち神様ですが、人は寿命がありますからな」 「そうですよ、貧乏神さんも死なないですからね」 「死神さんも死なないですか?」 「死にませんよ、死にたくても死ねない」 「神様は、終わりがないですからね」 「それにくらべて人間はメリハリがある」 「ありますか?」 「あります、ちょっと病気

妖怪笑い話 スイカ【#ボケ学会のお題】

 八さんが熊さんの長屋に遊びにきた。戸を開けると熊さんの頭がスイカだ! 「熊さんどうした」 「スイカの種を食ったら、スイカになった」 「あはははは、そんな馬鹿な」 「でも、このスイカは取れるんだよ」  頭のスイカを手でつかんですぽっととると、熊さんの頭の部分がなくなる。 「頭はどうしたんだ」 「しらねぇけどスイカを売れないかな」 「おいおい、売る気か」 「ああ、仕事にいけないからな」  見れば部屋中がスイカだらけだ。困ったときの近所のよしみ、八さんは、スイカを売り歩い

妖怪笑い話 雪ん子 【#ボケ学会のお題】

 男の子が真夏の道を走る。 「アイス、アイス」  駄菓子屋の白くて大きな冷菓容器にかじりつくと、透明なガラス板の奥で女の子が寝ていた。 「大変だ!」 「大丈夫よ」  中からガラスフタを開けると、水色の棒アイスを渡す。 「50円!」 「あ! はい」  ガラスフタがしまると、女の子がまた寝そべった。びっくりした男の子が駄菓子屋のおばあさんの所に駆けよった。 「おばあちゃん、女の子が寝てる」 「ああ、バイトで雪ん子を雇ったんだよ」 「雪ん子?」 「冬のオバケだよ」

SS 南米での出来事【友情の総重量】#毎週ショートショートnoteの応募用(800文字位)

 いつものように古い喫煙室でタバコを楽しむ。薄暗いランプの下で紫煙で広がる。まるで霧のように漂う中を一人の男が近づく。 「やぁ、調子はどうだい」 「南米の鉄道事業は失敗した」  彼を友人と呼べるなら友人なのかもしれない。たまに金を出して支援してくれるが、金を儲けたいようには見えない。 「今日も、話を聞かせてくれ」 「ああ、そうだな『友情の総重量』の話をしようか……」  自分も下見で南米に行く事はある。やはり眼で見ないと判らない。その時は幼い頃からの友人と南米の奥地に行

SS 新しい母【#雨を聴く】シロクマ文芸部参加作品 (870文字位)

 雨を聴くと心がおだやかになる。心音のように規則正しく地面を叩く、ザァザァザァ、血液が体を流れる音と同じだ。 「かずみぃ」 「なぁにぃ」  ザァザァと心音がする。母は階下から私を呼んでいる。ゆっくりと台所の母に会いに行く。父と母が座っていた。 「かずみ」  父が沈痛な顔で私を見ている。 「父さんは再婚するよ」 「……そうなんだ」 「部下の女性なんだが、とても家庭的なんだよ」 「うん……」  母は黙ってうつむいたままだ。 「それでな、お前が学校を卒業した後に籍を入

怪談 彼の罪 【てるてる坊主のラブレター】#毎週ショートショートnoteの応募用(600文字くらい)

 夕暮れになると弟を思いだす。警察は自殺で処理した。  だから私は復讐する。 xxx 「また死んだよ」  幼なじみの彼氏がうつろな眼をして私を見る。同い年の遊び友達は、みな死んだ。 「どうしてだよ、なんで死ぬんだよ」  死体は異様で頭からシーツをかぶって血まみれになって吊るされていた。警察が警戒していても納屋や庭の木で吊るされた。 「ねぇ、弟が死んでから事件が始まった……」 「……お前の弟は関係ない」  おびえた彼は、飢えた眼で私を見る。生存本能だ、死が近いか

SS お狐娘【祈願上手】#毎週ショートショートnoteの応募用(650文字位)

 たまにお狐娘の長屋に人が来る。父親が易者だったので頼み事をしたい客だ。 「そうですか、お父上はお亡くなりに……」 「私は占いができませんので」  でっぷりと太った男は眼をうつろにさまよわせる。彼は呪われている。 「なんとか助けていただけないでしょうか」 「祈願祈祷したいと?」 「はい」 「これに名前を書いて」  自分の名前を書かせて、それを小さく折りたたむ。それを、別の紙で作った『やっこさん』の中におさめる。 「これを家に置いて、そのまま旅立ちなさい」 「はぁ……

SS 私の見える世界 【色企画 第二弾‼︎】#新色できました(430字くらい)

 色は眼から入り色素を感じる受容体で識別する。だから色を人によっては同じ色とは限らない。 「まだお若いのに、ご愁傷様です」 「本当に、これからなのに」  父は憔悴しているが、母はそれほどは悲しんでいない。見えていたから…… 「かわいそうだけどね、しょうがないわ……」  母は私の頭をなでながらため息をついている。母は人が死ぬ時の色が見える。【霊色】を感じられる。いわゆるオーラだ。 「こうなんか体全体から、もやが出ていて色がついているの……」  母は私にだけは教えてく

SS 怪談:地下室のみち子【山岳カルマ】#毎週ショートショートnoteの応募用(930文字位)

 暗い山道を三人で歩く。急な登りは通勤列車ばかりの俺にはつらい。 「なぁ、どこに行くんだ」 「みんなの村よ」 「廃村になった……」  村の分校に通っていた。俺たち四人は仲良しで、同じ村に生まれて育ち、幼なじみが死んだ。 「みち子は、まだあそこかな……」  ぞっとするような記憶がよみがえる。 「その話はやめろよ」 「あれは、みち子が悪い」  子供の頃は男女二人ずつでペアのように遊んだ。幼い男女がする事は…… 「思いだしたくない……」 「みち子だけが嫌がってたからな