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SS 秘湯【一方通行風呂】#毎週ショートショートnoteの応募用
――世界はモノクロだ
――雨が激しく屋根を叩く
――うす暗い部屋で身動きをしない
壊れかけた板戸が、ズッズッと動くと男が入ってくる。
「ひどい雨だな」
暗闇にいる私は驚かせないように顔をだす。
「いらっしゃいませ……」
「風呂に入りにきた」
「はい、こちらです」
まずは足湯、ぬるく白く濁った湯で汚れをとる。
砂湯に案内して体を埋める。体の中までじっくりあたたためる。
――誰もいない小屋
――ただ静かに客によりそう
――眼をつむる客は……
「客は多いのか」
「いえ、まったく来ないです」
「秘湯と聞いた」
「ええ、一方通行風呂と噂されています」
「そこなんだよ、なんでそんな噂が」
――うとうとする客は、夢を見るようにつぶやく
――客は引き寄せられるように、おとずれる
――客の望む結末
十分にあたたまったら砂を洗うために鉄の釜に湯をためる。おいしい肉料理にして、食べてあげる……
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