見出し画像

妖怪笑い話 ロウソク【#ボケ学会のお題】

♪お囃子

 舞台に男が二人あらわれる。

「よろしくお願いします」
「貧乏神です」
「死神です」
「二人あわせて、生き地獄!」

 舞台で頭をさげるが客席はしんと静まりかえっている。

「いやー私たち神様ですが、人は寿命がありますからな」
「そうですよ、貧乏神さんも死なないですからね」
「死神さんも死なないですか?」
「死にませんよ、死にたくても死ねない」
「神様は、終わりがないですからね」
「それにくらべて人間はメリハリがある」
「ありますか?」
「あります、ちょっと病気になると死ぬ」
「死にますな」
「ちょっと高いところから落ちると死ぬ」
「死にますな」
「ご飯を食べないと死ぬ!」
「当たり前です」

 死神に突っ込む貧乏神、客席には呆然としている男女が舞台を凝視している。

「しかし貧乏神さんは、貧乏だからご飯を食べられないでしょ」
「別に食べなくても死なないから」
「私なんてとりついた人間が死んでも、お金出ないですから」
「じゃあ私と同じで貧乏ですな」
「そうなんですよ、だいたい神様はたてまつられてなんぼです」
「そうそう、ご利益があればお布施もがっぽがっぽ」
「ワレワレは、ご利益ないですからな」
「貧乏神にお賽銭をとか無意味」
「一生貧乏ですな」
「当たり前です」

 死神に突っ込む貧乏神の手が相棒の胸にふれる。

「あ!セクハラ、セクハラよ、貧乏神さんセクハラしてます」
「男同士じゃないですか」
「男だって男の胸をもんだらだめです」
「もんだらってちょっとふれただけでしょ」
「痴漢はみんな、そう言うんです。減るもんじゃないって」
「まぁ触っただけじゃ減らないですな」
「減るわよ、心が減りますぅ」
「心ってどんな心ですか」
「男の貞操?」
「そんなわけあるか!」

 頭を下げる二人に客は何も言わない。貧乏神が死神に文句を言う。

「死人に口なしだな」
「さっき一息で全員のロウソクを消したからな」

 舞台の灯りが消えると部屋がまっくらになり、どこかでヒヒヒッと笑う声がする。

♪お囃子

#ボケ学会
#落語
#怪談
#お笑い

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?