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SS 南米での出来事【友情の総重量】#毎週ショートショートnoteの応募用(800文字位)

 いつものように古い喫煙室でタバコを楽しむ。薄暗いランプの下で紫煙で広がる。まるで霧のように漂う中を一人の男が近づく。

「やぁ、調子はどうだい」
「南米の鉄道事業は失敗した」

 彼を友人と呼べるなら友人なのかもしれない。たまに金を出して支援してくれるが、金を儲けたいようには見えない。

「今日も、話を聞かせてくれ」
「ああ、そうだな『友情の総重量』の話をしようか……」

 自分も下見で南米に行く事はある。やはり眼で見ないと判らない。その時は幼い頃からの友人と南米の奥地に行く事にした。

「危険なのに?」
「危険だからさ」

 南米は奇怪な生物や野蛮な原住民が多い。万全を期していたつもりが、ポーターの現地人が裏切り、奥地で置き去りにされた。

 ヒルやワニに襲われながら一睡もしないで港に戻ろうとすると村が見える。木の柵は高く要塞のようだ。門から飛び出してくる原住民は私たちを難なく捕まえた。

「それは災難だ」
「死を覚悟したさ」

 彼らは私たちを見て選んでいた。もちろん言葉なんてわからないが身振りで判る。そして友人を選んだ。友人は泣き叫びながら私を指さす。

「この男の方が太ってる、食べるならこの男にして!」

 友人で婚約者の彼女は、自分を食べろと大声で叫ぶ。友情も恋愛も重さなんて無い、ただひたすら彼女は助かりたかった。

「それで? 彼女は食べられたのか?」
「彼らはそんな事はしないさ」

 柵の外で彼女を土に埋めて顔だけ出す。大声で泣き叫ぶ彼女におとずれたのは黒い蟻だ。人喰いアリは脂肪が多い女が好きらしい。本来は村の女を生け贄にする予定だったが、部外者の僕たちが代理に使われた。

「それで?」
「村は襲われずに、人食い蟻はそのまま、よそに移動したさ」

 紫煙がゆらめく、いつのまにか男は消えていた。老いたシワだらけの手でタバコの灰を落とす。

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