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雑多な怪談の話

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2022年8月の記事一覧

怪談:叫ぶ男

「怖い話を知りたいの?」 夕暮れで蝉がうるさい。ベンチに同級生と座りながら時間を潰す。俺は高校生になったばかりで初めての夏休みを満喫していた。一緒に居る彼女は俺といつも遊んでくれる。好きか嫌いで相手を選別する。そんな子だ。 「知子は興味ありそうだけど」 俺を見ている彼女はゆっくりと笑う。 「怖い話なんて無いわ」 彼女は怖い話は好きなのを知っている。外国の怪奇小説や動画の都市伝説を俺に教えてくれる。でもそれはフィクションでしかない。怖い事なんて、この世界では味わえない。彼女は

SS 株式会社のおと #毎週ショートショートnoteの応募用

「そろばんってなんですか?」 後輩が俺に聞いてくる。残業していると幽霊が出ると彼女は話す。この株式会社の音が廊下まで響くと言う。その部屋はもう使われてない。 「意味が判らなくて」 ソロバンを見たことも無い筈だ。 「昔の電卓だよ 手で動かして計算する」 「あー知ってます ラピュタで見ました」 アニメで知った口だ。 「それで電卓ってなんですか?」 そう言えば計算は全てソフトでやる、EXCELでやるのすら珍しい。専用ソフトで計算するので電卓を知らない人も居る。 「えーっと、そのOS

SS 株式会社のおと #毎週ショートショートnoteの応募用

「このビルか ……」 俺は嫌な予感しかしない。会社も生き物だ。メンテナンスを怠れば機能しなくなる。ボロなのだ、昭和かよと思うビルだ。○○株式会社の音で近隣のビルから苦情がある。配管だろうと俺は考えていた。古いと水が流れただけでも異音がする場合がある 休日のビルは気味が悪い。エレベータで順番に様々な階を調べたが別に何も異常は無い。配管ならば屋上から水を流して排水の音を確認しようとした。同僚を屋上に上げて俺はビルの中で待っていた 何分しても音はしない、連絡も無い、俺は屋上に行

SS みんながぐっすり寝たら、わたしたち、おフトンの妖精の出番なのです。 #ストーリーの種

夜は短いの。私たちが活動できるのは数時間しか無いわ。みんながぐっすり寝たら、わたしたち、おフトンの妖精の出番なのです。この世界には様々な妖精が居るけど私たちは人間に夢を見せるための妖精よ。 この村は本当に貧しいの。だから夢の中だけでも幸せになって欲しい。今日はパン屋のハンスさんの夢ね。私は彼の耳から入ると頭の中に侵入するわ。 「あら 耳の奥の扉に鍵がかかってる」 たまに居るのよね、夢なんか見たくないとか言う奴らが。こっちはボランティアなんだから無料なのに意固地になって見ない

SS 歪んだ顔【通信教育&計画通り&シンメトリー】三題噺チャレンジ

私はゆっくりと屋敷までの道を歩く。道沿いの樹木が並木道を作りシンメトリーのように美しい。私は左右対称が好きだ。今の時代は女が働くのが難しい。それでも勉強をして私は看護婦になれた。 「あなたが新しく来た看護婦さん?」 家政婦が私を見ながら目が頭から足まで何度も往復する。 「アリシアと言いますよろしくお願いします」 「本当にかわいいわね」 彼女はそれだけ言うと屋敷の部屋を案内する。古い屋敷はかなりくたびれているのか湿気も多く陰鬱だ。二階の一番奥まで行くとドアをノックする。返事

SS 初めての鬼 #毎週ショートショートnoteの応募用

「え?俺が初めての鬼だって?違うさ」 その男には頭に小さな角があるが髪の毛で隠れる。この地方に奇病があると言うので私は出向いてきた。医者として皆を助けたい。みなが角を持つ村は、貧しく水田くらいしかない。 「子供の頃からちょっとずつ伸びる感じかねぇ」 老婆の頭に大きな角が一本だけ生えている。彼女はそれを触りながら 「よく戸の出入りで角をぶつけるよ」 と笑う。 風土病と考えて真っ先に井戸水を調査する。やはり原因は寄生虫だ。真水に住む貝類の寄生虫が人間の骨を変化させる。水を煮沸

SS 初めての鬼 #毎週ショートショートnoteの応募用

僕は初めての鬼になる。じゃんけんに負けた。この村に引っ越してからみなが誘ってくれた。神社の子供が散らばる 「もういいかい」 「まあだだよ」 確かこの村ではハンデなのか小さな子の場合は、走って追いつけない場合は小石をぶつけても交代。僕は小さな小石を拾う 「もういいかい」 「もういいよ」 僕は隠れた子供達を探す。一人の女の子が木陰に隠れている。僕は触ろうとすると、するりと逃げる。足が速いどんどんと森の奥に逃げる。どこまでも逃げていいとは聞いてない 「まってよ」 僕は女の

SS フシギドライバー #毎週ショートショートnoteの応募用

博士が達成感に高揚した表情で 「時間ドライブを完成させた」 複雑怪奇な図面を見ながら彼は笑う。 「きっと成功させて見せる」 彼が作ろうとしている機械を、フシギドライバーと名付ける。時間を駆動させられる装置だ。任意の物体の時間を変更できる。博士は一枚の水彩画を見る。簡素な線で表現された絵には女性が描かれている。彼が青年の頃に描いた作品だ。もう既に居ない恋人の絵だ。 博士は装置を完成させると墓場に運ぶ。 「死体の時間を戻せば良い きっと蘇る」 博士は装置を駆動させる。実験は

SS 実話_バリケード_落武者 #三題噺

※性的な表現があります。 夕方に車に彼女を乗せると、肝試しに行く。彼女は怖い話と廃墟探検が好きだ。俺は彼女に、これから行く場所の説明をした。 「実話怪談?」 彼女はうっすら笑いながら俺の顔を見る。もう二十年以上前だろうか怖い話を実話怪談として紹介する場合が多い。昔の怪談は番町皿屋敷や四谷怪談のように侍が居る世界を描いていた。 それと区別するように現代の怪奇現象を語る場合は実話怪談と呼ばれる事がある。ただ実際は、幽霊の話に太平洋戦争の頃の兵隊や武士の幽霊の話が紛れ込んで

SS フシギドライバー #毎週ショートショートnoteの応募用

辻馬車は客が来そうな場所で待機するのが仕事だ。 保安官がやってくる。 「仕事だ 娘を運んでくれ」 俺は保安官と一緒に馬車の乗ると一件の家に寄る。 「ここの娘だ」 白い布に包まれた女は足の指に鈴をつけている。鈴をつける事で死体置き場で鳴るとまだ生きている事が判る。早まった埋葬を防ぐためだ。 「安置所まで頼む」 俺は死体を後ろの席に載せて運ぶ。しばらくすると手をあげるフードをかぶった男が居た。 「お客さん 今は死体を運んでいるんだよ」 軽く言うと男はフードを上げると骸骨の顔

SS 猫と老婆

今日も猫が夜の森を通り抜けて洋館を見上げる。猫用の出入り口があるので、そこから入り込むと年老いた婦人を探した。彼女は椅子に座ってるが、もう寝ているのか目をつむっている。猫はそこらで丸くなると寝ている。 柱時計の音だけが響く、時間が制止したようにも感じる。たまに猫の耳が動くだけ。しばらくすると老婆は目を覚ますと猫を探した。 「あらここに居たのね?」 老婆は猫の背中をなでると餌を与える。こんな生活が長く続いている。自分が歳で迎えが来る事も予感していた。この家から出たくな

SS 夏の夜 提供されたお題枠

そこは夕闇の湖に見える。遠くに月が見えるがまだ明るい。遠くに山と森林が広がる。俺はここにあるものを捨てにきた。女だ。 「ねぇ 私の財布からお金をとったでしょ」 同棲をしている彼女が鬼のような形相で俺を見ている。 「いいだろ 同棲しているんだからさ……」 いつもの喧嘩と思って真剣には感じなかった。俺は後ろを向くといきなり肩に激痛が走る。彼女は俺のマグカップで背中を叩く。激怒した俺は突き飛ばした。女の体は軽い。吹っ飛ぶようにリビングに倒れ込むと机に後頭部を打った。 しばらく

SS フシギドライバー #毎週ショートショートnoteの応募用

俺は夕暮れの道路をトラックで走る。荷物は川向こうに渡した。最近は橋が出来たので楽になる。昔は船で渡していた。しばらく走ると女がヒッチハイクをしていた。俺はトラックと止めると窓から腕を出して乗れと合図する。走ってくるのはまだ若い娘だ。 「ここがどこだか判らなくて ねぇこの道は どこに続くの?」 疲れたような表情で前だけを見ている。俺はどこから来たのかは知っている。彼女はまだ若いしまだ速い。 「なんで ここに来た?」 俺の質問にしばらくすると 「私は………薬を一杯飲んだの 気

SS フシギドライバー #毎週ショートショートnoteの応募用

「お客さん どこまでですか」 タクシーに乗ると俺は病院の名前を告げた 「このあたりは出るんですよ」 よくある話だ、道路に女が立っているとかだろう 「いいよ そんな話は」 バックミラーで俺の顔を見ると彼は納得している 「じゃあタクシー業界の不思議な話はどうですか?」 彼も退屈なのだろう、俺は黙ってうなずいた 「強盗の話ですけどね 同僚が若い二人連れを乗せたんですよ」 未成年の強盗事件か ニュースになっていた 「さみしい場所に移動させるとね 同僚を脅すんです 金を出せと」 彼は車