SS 初めての鬼 #毎週ショートショートnoteの応募用

「え？俺が初めての鬼だって？違うさ」
その男には頭に小さな角があるが髪の毛で隠れる。この地方に奇病があると言うので私は出向いてきた。医者として皆を助けたい。みなが角を持つ村は、貧しく水田くらいしかない。

「子供の頃からちょっとずつ伸びる感じかねぇ」
老婆の頭に大きな角が一本だけ生えている。彼女はそれを触りながら
「よく戸の出入りで角をぶつけるよ」
と笑う。

風土病と考えて真っ先に井戸水を調査する。やはり原因は寄生虫だ。真水に住む貝類の寄生虫が人間の骨を変化させる。水を煮沸して飲めば防ぐ事はできる。でも頭蓋骨が変化した村人は治らない。

私は報告をまとめると村長に対策を話す。彼は私の報告を聞くと立ち上がる。
「角は大事なんだ、無くすわけにはいかない」
隣に声をかけると村人が数人出てくる。巨大な角を持つ彼らは骨が強化されて怪力を持っていた。
「牛と同じ力を持てる貴重な病を手放す気は無い」
私は鬼は伝説ではないと悟る。彼らが近づく…………