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SS 夏の夜 提供されたお題枠

そこは夕闇の湖に見える。遠くに月が見えるがまだ明るい。遠くに山と森林が広がる。俺はここにあるものを捨てにきた。女だ。

「ねぇ 私の財布からお金をとったでしょ」
同棲をしている彼女が鬼のような形相で俺を見ている。
「いいだろ 同棲しているんだからさ……」

いつもの喧嘩と思って真剣には感じなかった。俺は後ろを向くといきなり肩に激痛が走る。彼女は俺のマグカップで背中を叩く。激怒した俺は突き飛ばした。女の体は軽い。吹っ飛ぶようにリビングに倒れ込むと机に後頭部を打った。

しばらくしても動かない。彼女を調べると死んでいる。俺はすぐに車で湖まで飛ばす。古い湖は夏場でも誰も居ない。悪い噂があるからだ。女の足を持って俺は湖に沈める。同棲中なだけで彼女以外の接点はない。このまま逃げれば誰も俺を追いかけない。

しばらく走ると湖についた。
「道を間違えた?」
戻ろうとすると湖から、ゆっくりと何かがあらわれる。白い顔の巨大な女が湖から出てくると
「お前が落とした女は銀の女か?金の女か?」
と訪ねてくる

俺は笑いながら
「金の女だ金をくれ」
女の体重と同じだけの金だ、億単位だ。そして俺は間違った選択をした事に気がつく。普通の女と言うべきだった。女神は俺の顔を見つめながら
「嘘はいけないな 罪は背負うべきだ」

死んだ女を俺の背中につけると湖に消えた。文字通りに女は俺の背中に背負われている。腐っても融合したままだ。俺の体も腐らせながら、警察病院の隔離病棟で、俺は泣き叫ぶ。

「俺が湖に落としたのは、死んだ女だ!」

終わり

湖


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