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SS 猫と老婆

老婆

今日も猫が夜の森を通り抜けて洋館を見上げる。猫用の出入り口があるので、そこから入り込むと年老いた婦人を探した。彼女は椅子に座ってるが、もう寝ているのか目をつむっている。猫はそこらで丸くなると寝ている。

柱時計の音だけが響く、時間が制止したようにも感じる。たまに猫の耳が動くだけ。しばらくすると老婆は目を覚ますと猫を探した。

「あらここに居たのね?」

老婆は猫の背中をなでると餌を与える。こんな生活が長く続いている。自分が歳で迎えが来る事も予感していた。この家から出たくない。娘は施設に行かせたいらしい。まだ自分でなんでも出来ると思っていた。

「おかあさん もう無理よ」

娘は老婆を見ながら洗濯や掃除をしている。たまに帰ってくるがこんな田舎は車を使わないと来れない。老婆は一人で生活はできていない。次に来る時は施設の車を回す予定をした。

「猫ちゃんどこ」

夜になると猫を探す。猫だけの生活。知り合いはみんな死んだ。夫はとっくの昔に病で死んでいる。老婆は猫をなでたい。よろよろと歩くと床に倒れる。誰も居ない家。誰も生きていない家。

「おかあさん 施設の人を連れてきたわ」

娘が家に入ると、老婆はニッコリと笑う。施設の人に愛想を浮かべながら老婆は施設の車に乗る。娘はこの家を売りに出す事にする。まだ住めるし雰囲気も良い。

売り家の看板を見て、買い手の夫婦と不動産屋が中を見回る。古いが頑丈で避暑に使えそうな物件だ。夫婦は購入決めたようだ。キッチンに入ると悲鳴が断続的に上がる。老婆の遺体から骨が見えていた。

「え?おかあさんが家で死んでいる?」

娘は電話を貰って施設に車で走る。母は施設を抜け出したのか?そんな馬鹿な。施設に到着すると急いで母の部屋に入る。椅子に猫が寝ていた。

終わり

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