マガジンのカバー画像

創作民話 関係

111
創作民話をまとめています
運営しているクリエイター

#天狗

天狗(03/15) 【幸蔵の旅】

前話 次話 あらすじ:山賊たちから娘を助けだして逃げるが、また捕まる。 「私は死んでもかまいません、この子を助けてください」  幸蔵が殺されそうになり、娘は山賊たちに懇願する。娘を見る山賊たちは、馬鹿にしたように大笑いをする。 「ははははっ お前たちは単なる犬畜生だ! 」 「やめろ! 」  娘を蹴り始める山賊たちに幸蔵は力を振り絞り立ち上がろうとした。必死の形相に、山賊たちも恐怖を感じる。山賊はすぐに殺そうと鉈を取り出す。 「ふむふむ、余興にしては、殺伐としているな」

修行(04/15) 【幸蔵の旅】

前話 次話 あらすじ:山賊を退治した天狗に大樹に連れてこられる。  井沢静は、天狗の世話をする。食事を作ったり部屋を掃除したりと忙しげだ。天狗の屋敷は巨大な大樹の枝にある。屋敷は、とても広く大きい。幸蔵の家の百倍はあると思われる。そんな場所に天狗は一人で住んでいた。 「昔は弟子もいたが、みなが地上で暮らしてる」  そんな風にさみしそうにする天狗は、元は人間で自分も天狗と暮らしているうちに神通力を得たと語る。 「おらにも神通力を教えてくんろ」  幸蔵は山賊に手も足も出

仙人(05/15) 【幸蔵の旅】

前話 次話 あらすじ:静を京へ送り届ける。 「荷物は、ありました」  山賊にさらわれて、荷物を盗まれた静は、父の仕事を受けついで自分が荷物を運びたいと幸蔵に頼む。幸蔵は寄り道は気にしていない、今は天狗の神通力が使えるので彼女をかついで走る事もできる。 「どこさ行くだ? 」  山向こうの庄屋だという。姉が居る村だった。幸蔵は静背中におぶる。手に柳行李を持って走り始めた。山道をスイスイと登ると静は楽しそうに笑う。幸蔵はその笑い声が嬉しくして自分も笑う。背中にあたたかい重さ

屍鬼(06/15) 【幸蔵の旅】

前話 次話 あらすじ:幸蔵の姉の嫁ぎ先で尸鬼が発生していた。 「ならば、俺が退治する」  幸蔵は自分の力を試したかった、尸鬼がどのような化け物かはわからないが、自分で退治できる自信があった。  仙人と名乗る老人は、頭をふると尸鬼は目に見えないと言う。鬼に実態はなく人の体内に宿るため退治は難しい、だから薬を使う。  静は、幸蔵の背負っていた柳行李を調べたいと言う。幸蔵が持ってくると中から袋を取り出す。 「鬼退治の薬と聞きました」  見れば赤い袋に【鬼おろし】と書かれ

呪文(07/15) 【幸蔵の旅】

前話 次話 あらすじ:幸蔵は屍鬼に立ち向かう。 「阿毘羅吽欠蘇婆訶」  幸蔵が両手で印を切る。着物をはだけると背中から羽を生やして飛び上がる、幸蔵は天狗の術で空を飛べた、自在に飛び回りながら屍鬼の頭に、天狗礫をぶつける。幸蔵は手から石を生み出して投げることができた。時間をかければ両手を抱えるような大きな石を作れた。 「これはたまらん」  屍鬼が山頂に逃げる。幸蔵も飛んで追いかけるが、屍鬼の足も速く飛ぶように地面を走る、負けじと追いかけると寺が見えた。 「この女を殺

狻猊(さんげい)様(08/15) 【幸蔵の旅】

前話 次話 あらすじ:姉を人質にされて幸蔵が捕まる  土蜘蛛は幸蔵の体を糸でぐるぐる巻きにして引きずりながら山を下りる。妖怪達は人が増えすぎたのが心配になっていた。徐々に自分たちの領域を浸食している。このままでは、いつか自分たちが住む世界が無くなると人間に恐怖した。 「狻猊様に頼もう」  島国が形成される前から地下深くで生きていた妖怪は、マグマの中に住んでいた。ドロドロの体を灼熱の池の中で世界を見る。 「塵芥のような生き物を恐れるのか?」 「ゴミでも多ければ邪魔にな

解毒丸 (09/15) 【幸蔵の旅】

前話 次話 あらすじ:姉を人質にされて幸蔵が捕まる 「他の村人をどうなる!」  人を消して妖怪だけにすれば争いは無くなる、それが妖怪の理想の世界だ。みなが一緒ならば争うことも無い。人を消すために、村を襲って尸鬼を増やしていた。  幸蔵は、このまま連れて行かれて妖怪なるよりも死を選ぶか? とも考えたが幸蔵の姉の千や静を見捨てる事になる。幸蔵は、その狻猊を倒せないか考えたが難しい。 「なんじゃ土蜘蛛に捕まっておったか」  仙人の老人が空に浮かんでいる、その足の下は雲が

蜃気楼 (10/15) 【幸蔵の旅】

前話 次話 あらすじ:姉を助けるために解毒丸を探す  静の話では、西国の洞窟に鬼が居て解毒丸を持っている、もし欲しければ鬼を倒すしかない。  幸蔵は、天狗の力を得て羽もあるが遠出は難しい。仙人は、もし解毒丸があるならば村人を救えるので、助けてくれると言う。 「わしの力では、鬼の力を防ぐくらいしかできん、退治はお前の力次第じゃ」  仙人は京の陰陽師から頼まれて、東国の薬を待っていた。幸蔵の姉が嫁いだ庄屋の家で受け取る予定だったが、村人に尸鬼が取り憑いてしまった。 「

渦巻き (11/15) 【幸蔵の旅】

前話 次話 あらすじ:姉を助けるために解毒丸を探す  静を浜に一人にするのも心配なので四人で小舟に乗ることにする。 「場所は判るのか? なぜ判るのだ?」  幸蔵は不思議そうに若者に聞くと幽霊島は蜃気楼として見るので本来の場所とは別の所に存在していると教える。 「蜃気楼?」  幸蔵は自分の知らない世界が多いことに驚きながらも、若者をあまり信用していなかった。小舟はしばらく陸地が見える場所を進みながら目印になるような、大きな崖に向かう。浸食された崖は巨大で山のように見

磯女 (12/15) 【幸蔵の旅】

前話 次話 あらすじ:鬼の策略で海の底に沈む幸蔵  沈みながら頭上の光を見る、もう手が届かない。溺れ死ぬ、静を助けられない、姉を助けられない。くやしさと悲しさで腹の下から痺れるような感覚が広がる。 (ねえさま、しずか……)  目をつむる、息苦しさから肺から空気があふれ口から泡を吹き出した。息ができない、もがくように手を上にあげる。その手を白い手が握る。 (人の子……ではないな。天狗が何をしておる? )  顔は女だが腰から人は蛇だ、磯女が幸蔵に向かって息を吹きかける

鬼退治 (13/15) 【幸蔵の旅】

前話 次話 あらすじ:鬼の策略で海の底に沈む幸蔵 「この島に、強い鬼がおるぞ」 「静は、おりましたか」  仙人が顎で位置を教えてくれた。島の中央に巨大な瓦屋根が見えた。鬼達がそこで暮らしている。 「私が行きます」 「お前一人じゃ難しそうだ、どれ仙丹をやろう」  白い丸薬は親指ほどの大きさだ。幸蔵はそれを無理して飲み込んだ。仙人は面白そうに笑うと「ためらわずに飲んだのはお前だけだ」  幸蔵の体から覇気があふれる。すべての攻撃を防ぐ不老不死の薬、仙人になるための薬は、

阿蘇へ (14/15) 【幸蔵の旅】

前話 次話 あらすじ:幸蔵は鬼の王を倒す。 「幸蔵ありがとう」  静が幸蔵の頭をなでる。幸蔵は不思議そうに静を見る。彼はもう彼女が遠くに感じていた。 「解毒丸があったぞ」  仙人が鬼達から薬のありかを聞き出していた。薬を持って故郷に戻る事にする。仙人は白い雲を作ると、みなを乗せて空を飛ぶ。姉の千を助けるために急いでいた。 「解毒丸を早く持っていくだ」 「効能どおりなら助かるだろうが……」  仙人は難しい顔をしながら考えている。万能の薬である仙丹を使えば治せるが人

旅の終わり (15/15) 最終回【幸蔵の旅】

前話 あらすじ:姉を助けるために狻猊に会いに行く  阿蘇の火口からゆっくりとマグマの塊が起き上がる。狻猊は数千年前に、九州の縄文人を滅亡させた、破局噴火を起こした妖怪だった。狻猊は、マグマから立ち上がり、ゆっくりと山頂に立つ。 「わしは世界を破壊するつもりはない」    狻猊は、妖怪達から頼まれて力を与えただけで、人と敵対を望んでいなかった。だいたい人ごときが彼に影響を与える事はできない。 「たまに人のイケニエを与えられたが……無意味だ」  大地の神は自然発生しただ