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さすらいをやめたヴェンダースの完璧な日々 『PERFECT DAYS』
ヴィム・ヴェンダースの映画とは、髭を養生蓄えたおじさんが車に乗りながら音楽をかけ、人と人の間を、土地と土地の間をさすらっていく映画だった。西ドイツやアメリカをふらふらとした末に、小津映画の風景を求めて東京をさすらった『東京画』からは40年ばかりの月日が経っている。
再び東京に帰って来たヴェンダースは役所広司を隅田川のほとりで車に乗せる。かかってきた曲はアニマルズの『朝日のあたる家/House of
目が合わないからいいんじゃない? 『イニシェリン島の精霊』
パードレック(コリン・ファレル)はある日突然、親友だと思っていたコルム(ブレンダン・グリーソン)から絶交を宣言される。だが、パードレックは全く身に覚えがない。
The Ugly, The Ugly and The Ugly
なぜコルムはパードレックに突然絶交を宣言したのか。まず私たちの意識はそちらに向く。
しかしその謎はコルムにとって特に隠された秘密というわけではない。彼は早々にその心持ちを喋
死がそこに、たちずさんて 『ケイコ 目を澄ませて』
寒風吹きすさぶ12月初旬の渋谷で、得体の知れぬほど怪奇的な笑顔を浮かべながら閉館迫りつつある東急百貨店の横を闊歩していたのは私である。ちょうど円山町のユーロスペースでは『ケイコ 目を澄ませて』が封切の初日を迎えていた。
なんのことはない、わずか100分の映画がマスクをしていたりといえども隠しがたい高揚を私の心に喚起せしめていた。それは間違いなく、恐るべき大胆不敵さによって決定づけられた最終盤の展開