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8月の珈琲

午後5時過ぎに家を出て、まだ暑さが残る川沿いの道を歩く。辿り着いた珈琲店の窓際カウンター席に座り、運ばれてきた水を飲み干す。身体の火照りは消えず、汗が噴き出てくる。

窓のロールスクリーンは下ろされているが、西日に照らされた窓ガラスから熱気が伝わってくる。着ている白いTシャツに汗染みができている。ポケットから取り出した青いタオルハンカチで首筋の汗を拭く。

飲み干した水のおかわりをしようとするが、面倒くさくなって東ティモールの豆の珈琲をマスターに注文する。シティローストの東ティモールはあっさりした飲み口で適度な苦味がある。

今日は、何か書けるだろうか。何かを書いてどうなるんだろうか。どうにもならない。書きたいから書くだけだ。明日まで休みがある。今日と明日で、何か書けないだろうか。過去に書いた文章をリメイクするとか。端末の中にいくつか文章が残っている。つなぎ合わすことはできないだろうか。

文章に取り組むと、それなりに力を使う。納得できる文章にするには時間がかかる。今、そのような力はない。少しずつ充電しては、時々放電してしまう。書く体力が溜まっていない。もともと、そんなものがあるのかどうか、疑わしいけど。

珈琲を一口飲むと、温かい液体が喉を通って身体をさらに熱くする。吹き出してくる汗でTシャツの背中部分が濡れている。背筋を伸ばしてもTシャツが背中にへばりついてくる。気持ち悪さはあるが、誰かに迷惑をかけているわけではない。ただ汗をかいているだけで、何があるわけでもない。

汗が引かない。次から次へと噴き出てくる汗が、Tシャツの内側の皮膚を流れる。首筋の汗はマシになってきた。額の汗粒に気づく。テーブルの上に置いてあったタオルハンカチを取って額の汗を拭く。

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