「ポメラ」への想いを込めた文章。
2018/12/17 07:06
ウェイトレスが注文を聞きに来る。ぼくは「ホットコーヒーで」と伝える。鞄から取り出したポメラをテーブルの上に置いて画面を開く。毎日タイピングするせいでキーボードの「K」の文字が薄くなっている。電源ボタンを押してポメラを起動させる。文章を新規作成し、タイムスタンプを挿入して改行する。「ウェイトレスが注文を聞きに来る。」とタイピングし始める。
ポメラを購入したのは2017年の1月だ。それから毎朝出勤前の1時間を、ぼくはこの喫茶店でポメラとともに過ごしている。「書く」ということをポメラで始めて、3年目を迎えようとしている。「何も書くことがない」と文字にしてタイピングするようになると、書けないことがなくなってしまった。いまでは約1時間、指先は止まることなくポメラのキーボードをタイピングし続ける。
ぼくの「書く」が所謂世間で言う「書く」ということに含まれるのかどうか、自分ではわからない。ただ、書いた文章がファイルとして保存されたフォルダをみると、そこにぼくの「書く」が数多く残されている。
最近、過去に書いた文章を編集する作業を始めた。フォルダから過去のファイルを開いて、書き散らかしていた文章を読めるように整える。ポメラの画面を20×20字のフレームにして、一文一文を確認しながら文節を区切る。適切だと思われる位置に句読点を打ち、文体を整える。検索機能を使って、言葉を確認する。気になる箇所には付箋文を挿入して、1日置いてからその箇所を読む。違和感があれば文章を直す。
ある程度文章が整った段階でポメラのQRコード変換を使ってiPhoneに文章を取り込む。仕事の休憩時間に文章を確認して最後の校正をする。
文章がひとつの形になると、誰かに読んでもらいたくなる。最近のプリンタはスマートフォンと連携させて直接印刷ができる。入力から出力まで、パソコンが介在しない。出力した文章を鞄のなかに入れておく。
ふとしたことがきっかけで、ぼくが書いた文章を喫茶店のマスターが読んでくれることになった。マスターは数日かけて、とても丁寧に読み込んでくれた。
「読んでいると、一緒にその場に居るような、目で見て、耳で聞いているような感覚になったよ。とてもよかった」マスターは感想を伝えてくれた。そして「これは小説だよ」と言ってくれた。とてもうれしかった。ただ「書く」ということを切実に続けてきたことが、ひとつの作品になっていた。ポメラはぼくと一緒にこの道を歩いてきてくれた。
小説を書くようになっても毎日やることは変わらない。朝7時に喫茶店のドアを開ける。マスターと挨拶を交わす。早足で階段を駆け上がって2階に向かう。窓から小さな交差点が見えるカウンター席に座る。注文を聞きにきたウェイトレスに「ホットコーヒーで」と伝える。そしてポメラを開いて、タイピングを始める。
ぼくはもう書くことをやめないだろう。創作に行き詰まって、作品として「書く」ことができなくなったとしても、ぼくの「書く」は失われることはない。書いて、書いて、また明日も書く。「サイフォン式で淹れた珈琲をウェイトレスがカップに注ぐ。窓の外の青い空が珈琲の湖面に映る。」ぼくはポメラのキーボードをタイピングし続ける。
「書く」ことに関して興味がある人に、ぼくはポメラの購入をそれとなく勧める。ポメラは「書く」という世界で波乗りをする人にとって上質なサーフボードのような存在になる。時に言葉の波に飲み込まれて派手にやらかすこともあるが、何度も試してその言葉の波に乗り始めたときの爽快感はなんとも言えない。
先日、職場の後輩がうれしそうな顔をして「ポメラ、買ったんですよ」と伝えてくれた。その後輩とは休憩時間によく話をするようになった。缶コーヒーを手に持った後輩は真剣な顔をして言う。「駅とかに設置されている、腰にポールを当てて座るというか、立つというか、そういう椅子、ありますよね、あれってどういう風に表現すればいいんですかね・・・」
上記は2年ほど前の「POMERA 10TH ANNIVERSARY キャンペーン【終了】」に応募した文章(微修正)です。「DM200スケルトンモデル」は獲得できませんでしたが、副賞の「10周年記念オリジナルステッカー」をいただきました。ポメラは「書く人」におすすめのガジェットです。
DM200は販売終了したようです…
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