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アドラー心理学の三角柱

 『嫌われる勇気』岸見一郎著がある。現在世界で200万部を突破した、ベストセラーだ。よくご紹介している。著者の岸見一郎先生は京都在住。定期的に京都で講演会が行われていて(岸見先生の公式HP参照)私も時間のある時に聞きに行っている。先生もご高齢ということもあり、コロナ禍の中ではWEB配信になってはいるが。

 『嫌われる勇気』はそもそもアドラー心理学をベースとしている。アドラーは、フロイトと主義主張の違いから袂を分かち、その後は、大きな団体にも属さずに、一生を臨床の道にささげた人である。かなり厳しい言葉もあるが、本質を射抜いているように思う。
 その中の一つ紹介させていただく。
人生の課題に直面したときには、『三角柱を想定してみる』。三角柱には3つの面がある。①はかわいそうな自分、②悪いアイツ、そして③これからどうするのか。

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 たいていの場合、①と②を往復する。いったりきたりと。そして前に進めなくなる。だけど、最終的には未来にむかって進まないといけない。だからこそ③は、これからどうするのか、である。
 この③に進みやすくするために、私たちカウンセラーの仕事があるように思う。
 一歩踏み出す勇気を持たせる。そのために、心の揺れに付き合っていく。
そして相手が本当に勇気づけられたときに、ひとは未来を信じて進み始めることができる。そしてこの勇気づけこそが、カウンセラーの仕事であるとアドラーはいう。
 どんな時に人は勇気づけられるのか、
 『人は、自分に価値があると思える時にだけ勇気がもてる。』のである。自分に価値があると思えるような働きかけこそが心理職の仕事である。
 では、いったい人はどのようなときに価値があると思えるのだろうか。そこに持っていくことこそが我々の仕事とアドラーはいう。
 

 人は得てして、劣等感をもっている。この劣等感が緩和されたときに『価値がある』と感じる。
 

 自分自身のことを振り返ってみても確かにそうだ。自分の内側にある劣等感「やっぱり自分はダメなんだ感」から「意外といけてる部分もあるんじゃないの」と思えたときに、前に踏み出す一歩がでる。やってみよう!と思える。
 一方で①と②との往復も悪いことではない。そこに人生の課題を見出すからこそ、深く考えることができるし、人生の不思議さや、人生の意味的なものを垣間見ることができる。そしてその往復状態から抜けた瞬間の解放感は、最高なのである。
 例えば、寒い中歩き回った後、自宅にかえって湯舟につかる瞬間の「くっ~~~~」と言いたくなるような時。または暑い中、汗まみれになった後のビールであったり、解放感は日常の中もこつこつ見かけるのではあるが、①と②との往復のあとの解放感は、それとはちょっと違っている。湯舟につかる瞬間や、ビールを飲む解放感は一瞬のことであるのだけれと、一歩踏み出し初めたときのものは、もっと継続した何かである。誇らしいような、それでいてすがすがしい、この感覚が欲しくて、ひとは前を向いて歩いていけるのかもしれない。
 ただし、次の課題を見つけるまでの間ではあるが。 

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