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#5 やってみせ、言って聞かせて、させてみせ、ほめてやらねば、人は動かじ


 連合艦隊司令長官、山本五十六と言えばこの言葉。というほど名言中の名言です。あまりにも有名すぎて取り上げるのをためらいましたが、ここはひとつ、初心に返って考えてみようと思って取り上げました。
 この名言を聴く度に、人が成長するうえで大切なこと、①率先垂範すること、②それを見せたうえで話すこと、そして③させたことに対して、褒めることが大事であるといった3つのことがわずか一行に凝縮されています。
 人は自分の身近にいる人の姿をよく見ているものです。口では立派なことを言っても、行動が伴っていなければ周りの人は聴く耳は持たないし尊敬もされません。行動が伴ってはじめてその人が言っていることは説得力を持ち、周りの人は受け入れてくれるのです。人間以外の動物のほとんどは、言われなくてもそれができているのに、なぜ人間だけが?と頭をかしげたくなる時があります。どういうことかというと、ある小児科医が「人間ほど『子育て』をしている動物はいない」と言っています。人間以外の動物は、親の姿を見て子が育ってゆく「子育ち」ができているけれど、人間は親が先に手を出し口を出すものだから子は育たないのだと。つまりその先生曰く、「子育ち」ができていないから、ずーっと「子育て」をするはめになるのだそうです。
 次に褒め方。「褒めて伸ばす。褒めて育てる。」ことが主流になっている今の教育にとっては、この褒め方については、よく考える必要があると思います。
 まず、下手な褒め方とは、
① 結果だけを褒める
② おだてる(本心で褒めていない) と言われています。
 これに対して上手な褒め方は、
① 結果だけでなくプロセス(過程)も褒める
② 本心で褒める
③ 間接的に褒める
 上手な褒め方の③にある「間接的に褒める」というのは、褒める対象の当人の周りにいる人たちに、その当人のことを褒めることによって、周りの人から「○○さんが、あなた(当人)のことを△△、□□と、褒めていたよ」と、当人に間接的に伝わることです。私の経験上からも、直接褒められるのも当然うれしいですが、間接的に伝わり褒められるのは、うれしさが倍増するものです。
 話を山本五十六の名言に戻します。
 この名言には、実は続きがあることはご存じでしょうか。

 「話し合い、耳を傾け、承認し、任せてやらねば、人は育たず」

と続きます。
 話し合いは言葉のキャッチボールです。キャッチボールは相手の捕れるところへボールを投げるものです。また投げる強さも受け手によりけりです。小さな子どもとキャッチボールする場合は、その子が捕れる山なりのボールをしかも取りやすいように相手の胸に向かってやさしく投げます。相手が取れそうにないスピードボールを取りにくいところへは決して投げません。同じように話し合いも相手の理解の度合いや興味関心に沿った話をしていくのは、まさしくキャッチボールと同じです。自分の言いたいことばかり言うのではなく、相手の話にしっかりと耳を傾けること、そして言っていることを受け止めて認めたうえで、信用して任せていかないと人は育っていかないとこの名言は言っているのです。これはコミュニケーションの極意ともいうべき内容ではないかと私は思います。
 しかし、山本五十六の名言はさらに続いています。

 「やっている、姿を感謝で見守って、信頼せねば、人は実らず」


という一行で締めくくっています。
 最後は、しっかりやったことを評価して、感謝して信頼してやらなければ人は成長しないと言っています。最終的には「感謝」なんだと思います。人は誰かに感謝されることではじめて自分が人のためになったといった認められた実感が湧き、それが自己肯定感となっていくのだと思います。そのためには自分の周りの人がしていることが、できて当たり前ととらえてしまうことからは、感謝の気持ちが湧いてくることはありません。当たり前のことを当たり前にできたと思ってしまうのは、そこに「気づき」がないからだと思います。
 3行をまとめてみると、

やってみせ、言って聞かせて、させてみせ、ほめてやらねば、人は動かじ
話し合い、耳を傾け、承認し、任せてやらねば、人は育たず
やっている、姿を感謝で見守って、信頼せねば、人は実らず

 わずか3行に教育・人間関係・コミュニケーションの要諦が凝縮された、まさしく名言だと思いました。まだまだ私は人間が半人前なので、この3行をこの程度にしかとらえることができませんが、深読みするともっともっと山本五十六さんは伝えたいことがあるのかなぁと考えてしまいます。まだまだ勉強が足りません。

 最後までお読みいただきありがとうございました。


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