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子どもの話を聞くということ・自分の気持ちを話すということ②

①で話した「疲れた」と言えなかった女の子は帰宅後にも荒れた

彼女は家に帰ったあともいつも持ち物を片付けたり手を洗ったりするのだがバッグを投げ、すぐにYouTubeがみたいと怒り出した。しかし妹が先にテレビをみていたので喧嘩になった。リモコンを奪い合い、妹もみている番組を変えられそうになり大声で叫ぶ

妹に一緒にYouTubeを見ることを提案したが今みている番組がみたいと言う
それなら仕方ない。
妹の番組が終わるまで待つよう伝えた
するとその子は怒って私に物を投げてきた

さて…どうしたものか
正直、物を投げつけられるとイラッとする。保育士といえど人間だ
そんなときは何もアクションを起こさず、とりあえず無になる

すると向こうから「だってYouTubeがみたいんだもん!!」と声を上げて泣き出した
「なんで投げるの?」「痛いでしょ」と言ったところでもうこの子はそんなことわかっている。この涙も「やってしまった」という気持ちが含まれている。きっと自分でもコントロールできなくてパニックになっているんだ
怒りたくなる気持ちも収まり、今この子に必要なことを考えた

「おいで、ギュッとしよ」

そう言うと素直にやってきてとりあえず何も言わずしばらく抱きしめ、泣き止んだところで「なんで涙がでた?今、どんな気持ちか教えて」と話すと「YouTubeがみたかったから」と答えた

YouTubeがみたいだけでこんなに怒って泣くのか?と思ったが、もしかしたらようやく幼稚園が終わって好きなことをしてリラックスしたかったのかもしれない
「そうか、youtubeがどうしてもみたかったんだ」「あとは?」と聞くと「疲れた」「友達はママがお迎えだった」とポツポツ話していた
「あぁ、最近ママ忙しくてずっとおばあちゃんがお迎えだった?」と聞くとそうだと言う。
そういえば今日迎えに行った時、クラスメイトのお迎えが重なって友達はママにジュース買ってと甘えたりしていた。それで「疲れた」時にママに甘えられず爆発したんだと理解した

「あなたはすごく頑張ってる、幼稚園で体操教室したり漢字をやったり、家ではお姉ちゃんとして妹に譲ったりしてるしいっぱい頑張ってるよ。だから疲れるよね。いいよ。YouTubeは妹が終わるまで少し待ってて欲しいけど、着替えとかお片付けとかいつもは自分でやってることは今日は甘えていい日にしよ」
と言うとさっきまでどんよりしていた顔がすっかり晴れ「じゃあ、いつもお風呂終わってから飲むジュース今飲んでいい?」とニコニコしながら妹の分もジュースを持って一緒に妹がみていたテレビを見始めた。お風呂に入る時も「脱がせてー」と言って甘えたりしていた
そして母親が帰ってきた時、この話をしても仕事でそれこそ一生懸命頑張って疲れている母親に負担になるのではと思い「今日はお疲れでちょっと寂しい気持ちになってたよ。ちょっとお姉ちゃんと話してみてね」で終わらせようとしたが本人から耳打ちで「今日、私がいろいろな気持ちになったことママに話して!」と言われた

そうか…この子は今日のこの気持ちをママに全部知ってもらいたいんだ。まだ自分ではうまくこの気持ちを伝えられないから代わりに伝えて欲しいなら
じゃあ、全部言おう!と今日あったこと全て母親に話した

すると母親は目を潤ませながら「寂しい思いをさせてしまった」と言っていた。しかし、今ジメジメした暑さや感染症対策、行事が重なって幼稚園もきっと今までにないことが重なってピリピリしていると思う。だから彼女はそれを感じて幼稚園で今まで以上にストレスを感じたり疲れたりしているんだと思う。母親の仕事もよく理解している。ただ、ちょっと疲れが溜まっているので顔を合わせたときはたくさん甘えさせてあげてと話してその家を後にした

そして翌週、またその子を迎えに幼稚園に行くとすぐに「今日は寂しい気持ち〜、だってママのお迎えがずっとないもん」と気持ちを話してくれるようになった。「それ、ママに言った?」と聞くと「言ってない」と言う
「ママは仕事で忙しいからお迎えが難しいかもしれないけど、でもお迎えに来て欲しいって気持ちは我慢しないで言ってもいいんだよ」と話すと「じゃあ今日言う!今日も幼稚園疲れたってことも言う!」と気持ちを話そうとするようになった

そしてその翌週はとうとう「今日も疲れた!だってさー今日こんなことして…」といつもの元気でおしゃべりな彼女に戻っていた。母親に聞くと毎日寝る前にベッドで抱きしめながらお話しするようになったそうだ。

子どもの話を聞くというと「今日保育園で何があったの?」「おやすみの日、おうちで何したの?」と出来事を聞くイメージがあったが、何かの出来事を話している時に「その時どんな気持ちだったの?」と気持ちを聞くことをプラスすることで意外な心境を聞けることがある
フィンランドにいるときに国際ボランティアのキャンプに参加した時も、毎回必ず自分の心境を話すアクティビティがあった。私たちのワークショップでも参加者の方にいろいろな場面を切り取った写真を一枚選んでもらい、「今の自分の気持ちとマッチする一枚を選んでなぜこれを選んだか話してください」と伝えている。そうすることで参加者の方が「今緊張している」「ワクワクしている」などどんな気持ちを持って参加してくれているのかわかる。

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保育士をしていると子ども同士のトラブルの仲裁でよく
「お友達が今どんな気持ちかわかる?考えて?」
と言っていたが
自分の気持ちが分からなければまず相手にも気持ちがあることは理解できない
自分の気持ちがわかってようやく相手ももしかしたらこんな気持ちなのかも…と考えることができるのだ

「ばか!」と言った子に
「バカって言われてOOちゃんどんな気持ちかな?」
と話したところで言った子も言われた子もバカという言葉に何も思っていない場合がある。
言い合いで次の言葉が出ないと周りがこの言葉を使うから使う。そういった場合は「バカは言わない!悲しい!」とその言葉は相手を傷つける言葉だと反射的にすぐに子どもを叱った

でも、なぜ「バカ!」と言いたくなるような気持ちになったのか
子どもの話を聞いて
なぜその言葉が出たのか気持ちを探り
じゃあ今度からこうやって言ってみたら?と気持ちとそれを相手に伝える方法を言語化する

それが子どもの話を聞くということなのかな?と私なりに思いながら今日も目の前の子どもと接する練習をしている

こんな偉そうなことを書いてもまだまだ私は子どもといるとイラッとすることもあるし、わがままなのか子どもの訴えなのか線引きに迷うことはたくさんある。
大人と関わる時にも逆に相手の気持ちを勝手に想像で考えすぎて妄想で決めつけてしまうこともある

そんな時は必ず「相手も気持ちを聞くこと」とポイントにして接するよう心がけている

yakko

ワークショップのお知らせ


今現場で働いている皆さんはイレギュラーなことばかりできっとお疲れのことと思います。
新しいことを学ぶ気力がない
でも現状に満足はしていない
暑くて疲れている
テレビをみてもネガティブな話ばかりで気が滅入る
何かいつもと違うことを知ってみたい
私も有料でお金をいただけるようなワークショップを企画する元気がない
そこで8・9月は学べるワークショップよりもリラックスできることをメインとした無料イベントを企画しました

フィンランドワークショップomena (1)

事前予約は必要ありません
チケット登録でオンラインzoomの視聴チケットを送りますのでいくつかある開催日の好きなテーマ、好きな時間にご参加ください
今日は気分じゃない…そんな時もキャンセル連絡など入りません
気軽に遊びに来てください

9月は保育・教育メインのお話しをする予定です
↓詳細はこちら↓

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とにかく今は現場で働いている人たちがホッとできる場所が欲しかったので
(というか私が欲しいので)別に商品を販売したり、名簿リストを転売したり怪しい取引をしようということは全くありません笑

お時間がありましたら遊びに来てください

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