新NISA元年に金融以外の投資を考える ~自己投資としてのキャリアコンサルティング~

このnoteでは、投資がキーワードです。
2024年の新NISA開始で、投資=金融投資 という認識とムーブメントが強くなっています。同格以上で考えるべき自己投資について、改めて考え直すために書いています。


金融投資の前に考えることがある

先に得をするのは、政府・証券会社・企業

2024年から、いわゆる新NISAがスタートしました。世の中に情報が溢れかえっているので詳細の説明は不要ですが、一言でいえば”使いやすく”なりました。
日本政府としては、タンスを含む預貯金からお金を引っ張り出してきて市場に投入させる意図がありますし、証券会社も手数料収入を増加させるチャンスです。一般企業も、金融市場が盛り上がるので(タナボタ的に)企業価値が上がりますし、資金調達に追い風にもなるでしょう。新NISAというブームとともに、一般市民のマネーが流れ込んできます。
つまり、政府・証券会社・企業が、新NISAで先に得をします。

本当に自分が得すると思っていますか?

いやいや一般市民も得するでしょ、という意見は当然出てくるでしょう。
だって、投資で得た利益には一切課税されないし、それが無期限だし、1800万円っていう十分な投資枠だし、と。

これはそのとおりですが、前提条件があります。それは以下のものです。

  1. 金融投資で利益を得られること

  2. 金融投資以外で得られる利益 < 金融投資の利益 であること

投資で100万円の利益が出たケースで、"NISAじゃないと80万円しかもらえません。NISAだと100万円まるまるもらえます"というのが一般的な説明ですが、これは「利益が出る」前提の話であると冷静に受け止めてください。取らぬ狸の皮算用で、その気になってはダメです。先に得をする人たちがその気にさせるために使っている都合のいい事例であることをわかっておいてください。
あなたが利益を出せなくても、誰も助けてくれません。宣伝して売り込んだ証券会社は知らんぷりです。「元本が保証されていません。ご自身の判断のもとでお願いします」の一言で終わりです。節税を喜べるぐらいの利益が出る投資は、まちがいなくリスクを伴います。

ちなみに、私は金融投資を否定しません。むしろ肯定しており、自分もそれなりの金額を株式や債権に投じています。(そして今のところ想定以上の利益が出ていますが、これは市況と円安に助けられています。たぶん、そのうち落ちるでしょう)。現金との配分や、投資商品のミックスによって許容できるリスク範囲に抑えています。また、15年以上の長期投資であれば、リターンはプラスになるという歴史的事実はありますし、その事実の前提になっている資本主義のメカニズムはこの先も有効だと思っています。なので投資しています。

その上で、もう一度問います。あなたは本当に金融投資で自分が得すると思っていますか?


自己投資を改めて考える

重要なのは、2番目のポイント(金融投資以外で得られる利益 < 金融投資の利益 であること)です。
「投資先はどうやって決めましたか?」という質問をしたときに、「分散が基本なのでオルカンです」とか「アメリカの強さは変わらないからS&P 500」と答えるのはアウトです。暗黙のうちにお金の使い方として金融投資を選んでいることになります。

金融投資以外の投資先を考え尽くして、それでもなお金融投資を選びましたか?
この質問にYesで答えられる人はこのnoteは読まなくていいと思います。

金融投資と並べて考えるべきは、「自己投資」です。
金融商品だけ見ていてはダメです。それはあなたの預貯金を狙っている人たちの思うツボです。投資先として「自分」を考えるべきなのです。

自己投資は言葉そのものは古いですし、その重要性についても十分に言い尽くされています。しかし、新NISAをきっかけとした”投資ブーム”が、その重要性を隠してしまうことを危惧しています。
ですので、あえてこのタイミングでnoteを書いています。


人生経営の中で「投資」とはなにか?

そもそも投資とはなんでしょうか?
このnoteのテーマである「自分の人生を経営する」中で、「投資」とはいったいなにかを考えたいと思います。

投資とは、資産を増やすことを意図したお金を投じる行為

人生経営においての投資は、「資産を増やすことを意図したお金を投じる行為」と考えています。資産を増やす、と、意図した の2点がポイントです。
人生経営においての資産は、時間・健康・お金・能力だとしています。つまり、投資とはこれらを増やすために意図的にお金を使うことを意味します。

NISAのような金融投資は、お金という資産を増やすためにお金を投じることです。資格試験のテキストを買ったり、受験費用を払うことは能力を増やすためにお金を投じることです。

投資と消費と浪費

ここで少し引いて、お金の使い方について少し触れておきます。
人生の中でお金を使うシーンは山ほどありますが、以下のように大きく3つに大別できると考えています。

投資と消費と浪費

上述した通り、投資は意図を持ったお金の使い方で、その意図が資産を増やすことを目的としたものになります。
消費は意図はしていますが、資産は増えません。資産が増えない、となるとなにか良くないことのように見えますが、まったくそんなことはありません。普段のお金の使い方のほとんどは消費にあたります。むしろ、人生の豊かさは消費の量に比例します。旅行・交際・食事などの経験消費は人生の豊かさに大きく寄与するお金の使い方(消費)です。

投資には、意思が最も表れる

消費は人生の豊かさに直接的・短期的に寄与するお金の使い方で、お金を使うときに楽しさや喜びを実感できます。なので、どうやって消費するかは簡単に決めることができます。

一方で投資は、人生の豊かさには間接的・中長期的に寄与します。例えば自分の能力向上のために投資したとして、その効果が表れる(仕事の中で成功体験ができるとか、収入が増えるとか)のは、そこそこ時間が経ってからになります。
加えて、投資の効果は消費に比べれば確実性が劣ります(=リスクがある)。

それでもなお、投資をするためには自分の意思がなければできません。なので、投資には意思が最も表れると考えています。


投資は課題解決のためにする

どんな意図をもって何に投資するのか?してきたのか?

僕にもみなさんにも、投資してきた経験があると思います。改めて、自分の過去の投資の意図を振り返って見る機会にしたいと思います。

企業勤めをし始めて2024年で丸18年になりますが、継続的に自分に投資はしてきました。能力向上のための投資、具体的には書籍の購入は止めたことがありません。その時々で学ぶ内容はちがいますが、惜しむことなく投資しました(どちらかというと、読むための時間がボトルネックで投資上限が決まってしまう)
2023年は、能力向上を意図した書籍購入で20万円の投資実績です。

この投資は、なにかきっかけがあったというよりは、仕事をする中でなにかわからないことが出たり、考える切り口やアイディアがほしいときに探して購入しています。
以前に書いた以下のnoteの考え方によるものです。

上記のような継続的な投資に加えて、節目節目で自分に大きな投資をしてきました。振り返ってみれば、投資をしたタイミングで結果としてキャリアチェンジができています。

自分にとって象徴的なのは、技術開発→商品企画に社内ジョブチェンジしたときと、キャリコンを取ったときのふたつです。
このふたつに共通しているのが、以下のポイントです。

  • 仕事で成果を出すために質的な能力変化が必要だった

  • 価値観に基づいて自分を鑑みると、現状維持が我慢できない状態だった

それぞれ過去の記事で触れていますので、ご参考まで。

要約すると、キャリアに不連続な変化を起こすことが課題であったときに大きな投資をしてきたことになります。ここでいう「大きな」は金銭的なことだけでなく、意思の強さも含めた意味合いになります。

あなたが解決したい課題はなにか?

さて、今までのところを整理した上で話を進めます。

  • 投資=金融投資ではない。自己投資も含めて「投資」である

  • 具体的には、投資先=金融商品ではなく、「自分」を投資先として評価した上で投資を考えるべき

  • 人生経営においての投資は、「資産を増やすことを意図したお金を投じる行為」

    • 資産は、時間・健康・お金・能力の4つ

  • 能力への投資は、「どうにも我慢できない現状から抜けるために、キャリアに不連続な変化を起こす」という課題を解決するために特に必要となる

いま、なにか解決したい課題はありますか?

僕の場合は、能力の観点のみでしたが、健康観点で課題を設定されている方もいるかと思います。(僕もジワジワと感じています)
また、キャリアでのイベント(たとえば出産・育児)が起こり、時間観点で課題を持っている人もいると思います。

年始めということで、振り返りや課題設定・目標設定をしたくなる季節だと思います。
今まで通りの「今年の目標!」とか「絶対これを習慣にする!」といったエモーショナルな視点ではなく、「投資先を選定する」というクールな気分で、解決したい課題の設定をしてみてはいかがでしょうか。

キャリアコンサルティングに投資しよう

自分一人で振り返りや目標設定をしてもいいですが、上述の通り、自分の価値観に照らし合わせて現状を評価する必要性があります。
自分の価値観は、なかなか自分では気づけ無いものですし、言語化しにくいものです。
それを助けられるのがキャリアコンサルタントが行うキャリアコンサルティングです。
ぜひ、キャリアコンサルタントを探して活用してみてください。

僕でよければ、コンタクトいただければご相談にのります。


投資の量感を考える

投資はどれだけすればいいのか?

金融投資と違って自己投資には定量的な目安がありません。一体どれだけ投資すればいいのでしょうか?
僕も全く答えを持ち合わせていないので、このテーマは今後の課題です。

ベンチマークとして、企業の投資を見てみるのは一つのアイディアです。僕が重視してきた「能力」という資産を大きくする投資は、企業で見れば研究開発費に相当するものだと考えられます。

自分の能力を質的に向上させて成果を出す、ということをやり続けている最もシンボリックな存在は Amazon です。彼らはとんでもなく投資し、とんでもなく成長してきた存在です。

2022年のAmazonは、売上高 $514B、研究開発費 $73B です。売上高に占める研究開発費の割合は14%です。

単純にビジネスパーソンに当てはめると、額面年収の14%を自己投資していることになります。これはなかなかの量感ですね。年収500万円の人が、70万円の自己投資していることになります。

Amazon=世界一のエクセレント とするならば、この金額比率が最高峰です。これを維持しているのがAmazonのすごいところですが、ビジネスパーソンならば、ここぞというときにはこのぐらいの規模感で投資をする必要があるという示唆になると思います。

もう少し平均的なものを見てみましょう。
日本政策投資銀行の2022年のレポート「日米製造業の研究開発効率」によると、日米ともに製造業では売上高に占める研究開発費の比率は概ね2%~4%程度のようです。
3%を採用すると、年収500万円の人が15万円を自己投資に当てるイメージです。1000万円の人なら30万円です。感覚的な話ですが、なんとなくそれっぽい金額ですね。

日本政策投資銀行 「日米製造業の研究開発効率」 図4より引用

このレポートで興味深いのが、研究開発の投資目的も定量的に調査しているところです。投資の対象とする能力への示唆として参考になります。

日本政策投資銀行 「日米製造業の研究開発効率」 図3-1より引用

最後に

世の中が投資ブームに沸いている様を見たことをきっかけに、投資について考えてみました。
お金に働いてもらうのも結構ですが、自分の働きをさらに素晴らしいものにするためにお金をもっと使ってもいいのではないでしょうか。

金融投資と違って自己投資がいいのは、投資先をコントロールできることです。企業に投資(株式を買う)した場合、相当な金額を突っ込まないと言うことを聞かせられませんが、自分ならば言うことを聞いてくれます。
投資に対するリターンをきちんと出せるからこそ、思い切って投資ができるのではないでしょうか。

それでは、2024年もあなたのキャリアにとってさらに良い年になるようにお過ごしください。

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