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恐縮ですが、育児中。 《1》

毎日ドタバタしながら父子2人の生活を送っていた10年前。アートユニット「明和電機」のファンクラブ会報「明和電機ジャーナル」から、そんな日常についてのコラム連載を依頼され、2ヶ月に一度ポンチ絵つきの原稿を書いていました。これからしばらく、毎週日曜日ごとに1本ずつ再掲してみます。

今や男性も、ふつうに育休をとる時代。男の育児を特別視する「イクメン」なんて言葉も、もはや死語になりつつありますよね。そんな今の目から見て、10年前のシングルファザー生活は古く感じられるか。現代にも通じるものがあるのか。お気楽に、ご笑覧いただければ幸いです。


子連れ生活ってのは、毎日が恐縮の連続です。

小さいお子さんをお持ちの方なら、おわかりですよね。電車に乗るにしてもショップに行くにしてもレストランに入るにしても、常に心の底にあるのは「子どもが騒ぎやしないか」「まわりに迷惑かけやしないか」という不安。

もちろん、その不安は的中します。

騒ぐ、走り回る、コップは倒す、商品は落とす、トイレのない所に限って「おしっこ」と言い出す。必ずや、何らかの「事件」を引き起こしてくれるのが、子ども。どこへ行っても恐縮するしかありません。

もともと当方、いわゆる「子ども好き」などでは全然なく、むしろ「チッ!子ども、やかましい!」と舌打ちしたりするようなタイプだっただけに、なおさら恐縮です。

したがって、クルマに乗る人が駐車場の有無でレストランを決めるように、酒好きが置いてあるビールの銘柄で酒場を選ぶように、育児者はとにかく子どもを基準に行先や行動を考えるようになります。

見かけません? コジャレたオープンエアのカフェで、テラス席に陣取る子連れマダムたち。あれは格好つけてるわけでも何でもなく、いざ子どもが騒ぎ出した時など他の客への迷惑が最小限で、即座に連れ出せるポジションなんですよね。

まして親が1人の育児では、とにかく手が足りない。キャッシャーで支払いをしてる間も子どもは、タタタッとどこかに走り出してしまう。こっちが重い荷物を抱えてる時に限って「だっこ!」とぐずる。

それでも当方は男なので、体力で無理やり乗り切ることができる。一方、お父さんがお勤めの間、1人で面倒みてるお母さん方はどれだけ大変か。自分がその立場に身を置いて初めて、理解できました。

けれど同時に思うのは、苦労が大きければ大きいほど、愛着も思い入れもぐっと深くなるということ。

恋愛だってそうでしょう? 自分を振り回すような小悪魔とか、手のかかる相手ほど、むしろ好きになっちゃう事って、ありません? 

……おっと失礼。当方ごときが恋愛論までエラそうに語ってしまいました。

まったく恐縮です!


初出:「明和電機ジャーナル」第17期 第1号 (2010年5月15日発行)

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