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佐藤あやみ=「消費しない」豊かさを=
2023年4月9日 00:49
ロンダニーニのピエタ像(ミケランジェロ、亡くなる直前の未完の作品)をイタリアでみたとき、「ひっ、生きている」とおののいた。この感覚になるアートってほんとうに少ない。何の気なしに宿の近くに城があるから、ふらりと入ったミラノのスフォルツァ城(現在改装され美術館になっている)でびっくりした覚えがある。ミケランジェロの存在がすぐそこに感じられるのである。嫌なエネルギー感ではないが、ものすごく「
2023年3月8日 22:24
迷い込んだ浜辺で。うだる暑さのなかのモスクで。湖のほとりで。おんぼろバスのなかで。アフリカでそこかしこに見たのは、祈る人々だった。貧しさに、飢えに、不遇に耐えるために祈る人々。アフリカの人々にとって、神はとても近くにいるのに、その光ははるか遠い。 わたしはモザンビーク島があるモザンビーク北部から、ほぼ最南端にある首都マプトへ行くために、バスの乗り継ぎをしにベイラへ来た。 モザンビーク島に
2022年11月29日 01:17
前編はこちらカバとの対峙 次の日の夕食の後、昨晩と同じに流しで皿洗いをしていた。流しのそばには勝手口があって、外のたたきでは猫が数匹餌を食べていた。ふと猫を見に勝手口から顔を出すと、ショーンが勝手口の外側にいた。「こっち、静かにおいで」とショーンが手招きしている。勝手口を出てみると、なんと数メートル先の草地に、カバが草を食んでいるのが見えたのである。本当に手に届くほどの近さであっ
2022年11月29日 01:16
カバの影 夜に溶けてしまいそうな大きく暗い湖を、満月が照らし出す。湖のへりの草原に、のっそりと、どっしりと歩く巨体がある。夜風は湿っている。一歩その巨体が踏み出すごとに、土がみしみしと音を立てる。巨体の持ち主の顔は暗く、よく見えない。この巨体がこどもなのか大人なのか、まったく検討が付かないが、人間の何倍もあることには間違いない。月夜を破るようにばりっ、ばりっ、と音が響く。…カバが草を噛み、引き