三浦さんのエッセイ
『舟を編む』との出逢いに始まり、『まほろ駅前多田便利軒』『墨のゆらめき』そして『「罪と罰」を読まない』ですっかり三浦しをんさん作品ファンになった私は、本屋さんに行く度に三浦さんのエッセイにも目をつけていました。
実は、小説だけじゃなくてエッセイもたくさん出されていたんですね。手始めに、直感的にピンときたのを2冊読んでみました。
『悶絶スパイラル』- 著者: 三浦しをんさん
私が三浦さんの小説に惚れ込んだのは、登場人物の心の機微、美しさや寂寥感を伴う風景など、うっかり見落としてしまえばそれっきりになり得るどんな些細な事柄も、とてもとても丁寧に言語化しつつ、どこか優しさを感じられるのが主な理由の一つです。
そんな実直な文章をお書きになる三浦さんのイメージに、良い意味で勝手にギャップを感じて衝撃笑撃だったのが『「罪と罰」を読まない』でした。4人の作家さんたちそれぞれ物凄く面白いのだけれど、三浦さんの想像力妄想力の鋭さがダントツでぶっ飛んでいて最高だったのです。
こんなに面白い方だったとは!!制約なくご自身のことを書きまくったら一体どうなるんだ!?と、期待に満ちて読んだこちらのエッセイ。想像以上でした。
ふとした発想も、細かいところへの着眼点も、常人のそれとは格段に違う。その上、そんな三浦さんとマニアックなお話に深みを増していく素敵なお仲間もたくさん登場。ご家族も素晴らしくキャラ立ちしていらっしゃる。
村田沙耶香さんのエッセイとは、また全然違う方向性でのぶっ飛び方。お二方とも、もしもいつか機会があればぜひお会いしてみたいユニークな作家さんだなあ〜と改めて思いました。
『本屋さんで待ち合わせ』
このエッセイは、こんな文言から始まります。
これはね、誇張じゃないのです。私はもう知っている。だって、さっきのエッセイ(『悶絶スパイラル』)を先に読んだから。三浦さんがいかに本や漫画を愛し、既読未読に関わらず毎日様々な本を味わい尽くしていらっしゃるかは、もうよく分かっている。
じゃあ、そんな三浦さんがここぞとばかりに本の紹介に集中されたら、どうなるか…?
はい、こうなります。前書きのはずが、開始3行目にして本の紹介が始まります。この勢い、本当に凄まじい。
結果…圧倒されまくり。いったい全体、このほんの250ページほどの文庫で、三浦さんは合計何冊の本を紹介されたんだろうか。とんでもない情報量に溺れた私は、息も絶え絶え何とか読み終わりました。
一応、章立てはしてあるのです。「はじめに→第一章〜第五章→おわりに→文庫版あとがき」のように。ところがどっこい。いくら書評集とはいえ、まさか「はじめに」にも「おわりに」にも「あとがき」にまで、本の紹介と書評が盛り込んであるのは初めて!
まさに文字通り、ページの許す限り本紹介が止まらない止まらない。それでもたぶん、三浦さんは紹介しきれていないご様子。本好きのレベルが違う。
読了した私は愕然としました。こんなにも膨大な量の本が出てくるのに、私ったら見事に1冊も読んだことが…ない!!例えば、誰か読んだことありますか?『目指せイグ・ノーベル賞 傾向と対策』なんて!
村田さんの書評集にあった本もたくさん読みたくなってしまって沼だったのに、まだその沼を開拓しきる前に、さらなる深みの沼がこんなに広がっているとは…。やはり、作家さんのエッセイ、特に書評集、お、恐るべし…!!
普段全く興味のなさそうな本でも、言語化の達人たちが想いを込めて紹介していると何でも読んでみたくなってしまう。
実は今現在、先日note上でオススメ頂いた川上弘美さんのエッセイ(書評集かな?)も積ん読に控えておりまして…もう、危険な予感しかしない…笑。
本の沼、いや、沼どころか海、いつの間にかどんどんマリアナ海溝に向かっているような気にもなる今日この頃です。
あ、一点だけ、この本の注意点をお伝えします。とんでもなくジャンルが幅広いのは良いのですが、公共交通機関で読んでいると、もしも万一隣からチラッと覗かれると度肝を抜かれそうな本も唐突にたくさん紹介されておりまして。。。
あ、いや、これ、違うんです、別に私が選んだわけじゃなくて、しょ、書評集なんです、み、三浦さんが!三浦さんがここに書いてるだけだからぁぁぁ!!
と、隣のリーマン(スマホに夢中で全くこっちなんか見てもいない)に脳内で全力で弁明しながら、混んでくるとページをそっ閉じするビビリな私には、真の読書家(って何だ)への道のりはまだまだ果てしないようです。
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