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わたしのBlu-rayレコーダーはAIかもしれない ―WBC―

古い話題になっちゃったけど。



選手が日の丸を背負う大会が好き。娘には毎回「にわかのくせに」と言われる。普段は野球もサッカーも観ないから。


WBCすごかったですね!


準決勝。
村上選手の逆転サヨナラ打で、全員が野球少年のようにベンチから飛び出し腕をぐるぐる回しているのを見て「録画したかったなー」と思った。

こんな劇的な試合、なんども観たい。なんどでも感動したい。ただ、わたしには決して録画してはいけない理由がある。


『録画すると日本が負ける』
という、ワケのわからないジンクス……。


今、鼻で笑ったみなさん。「そんなわけない」「侍JAPANは大丈夫」「あんたなんか関係ない」って思ったみなさん。そんなこたぁ、わかってるんです。

問題はわたしのほう。負けた時のわたしの落ち込みようを、あなたは知らない。「録画したばっかりに…」何度思ったことか。立ち直れない。自分がサヨナラを打たれたくらい落ち込む。野球できないけど。いつからか録画しないで観戦するようになりました。はい。


そんなこんなで、朝の試合を夜も放送してくれてありがとう。勝つのを知ってて観る試合は最高です。安心して録画もできるってもんです。ただ、録画の容量が……。

Blu-rayレコーダー本体はライブや音楽番組でいっぱい。5年前に終了した『地球絶景紀行』なんてのもまだ入ってる。実家に戻ってからアンテナの関係で居間にあるわたしのBlu-ray。親が常にTVを見ているので、ずっとダビングをサボっていた。確執があるので居間にはなるべく行きたくない。準決勝はあきらめた。

で、決勝戦。
決勝戦まで来たんだから、もうどっちが勝ってもいいよね。アメリカが相手なんだから、スゴい試合になるに決まってる。負けたらわたしのせいってことでいいよ。もう。夜中にダビングを繰り返し、放送延長も考慮して、なんとか5時間分確保した。


結果はご存知のとおりだ。

やったー!よかった。
録画してたのに勝ったー!


仕事が昼休みになった娘からLINEがきた。

いつもはわたしよりも興味ないくせに


TV欄には見あたらない。

「録画したから大丈夫!」

得意げに返信。ちょっと鼻がふくらんでたかもしれない。


すべてのセレモニーを見届けてから、隙をみて居間に行き確認する。


あれ?


どゆこと?

村上選手のホームランは?土の付いたユニフォームでブルペンから歩いてくるオオタニサンは?トロフィーを渡されて「重ぇー」って言った栗山監督は?


あー!

気がついてしまった。


12年も使っているあいだに、きっと学習したんだ。『負けられない試合の時は録画してはいけない』って。AIかな?


電源を入れると時々「PLEASE WAIT」という文字が永遠と点滅するBlu-ray。開/閉ボタンを押すとディスクを取り出す手を噛もうとするBlu-ray。編集のしすぎでリモコンにはわたしの爪のあとまでついている。

専業主婦でひきこもりの頃からずっと、一番仲のいい相棒だった。が「そろそろ新しいのに買い換えようかな」と思ったのを察したんだ。きっと。


優勝を喜んだぶん、落ち込みかたの落差が激しい。CMごと、緊張感ごと、残しておきたかったのに……。布団を被ってふて寝しようかと思ったほどだ。


夕方、娘からまたLINEがきた。優勝したので19:00からTVで緊急放送するらしい。え?もう自分の気持ちをどうすればいいのかが、わからない。

とりあえず予約は、しとこう。勝手に判断されては困るので、チャンネルと時刻、アナログ?で予約した。

娘とはキッチンのTVで二度めの観戦。缶チューハイで乾杯。ようやく元気になれた。気持ちよく寝た。


次の日の夜中に編集。ディスクに焼いてしまえば、自分の部屋でまた好きな時に見れるからね。長すぎるので分割。6回の裏で切ろうかな。


あ!

一瞬見えた文字。イヤな予感。



『……決勝戦の6回裏までに活躍した選手のみなさん。継投した投手のみなさん。すごかったです。頑張りましたね。でも本当にごめんなさい。わたしは、あなたたちの功績をおもいっきり削除してしまいました。』


ホントにもう。なにやってんの!

今度は本当に布団を被ってふて寝した。……もうやだ。


翌朝。
いやいや、待てよ。これはBlu-rayからのメッセージだ。わたしは自分に起こったことは、すべてワケがあると思うことにしている。やらかした過去の失敗も全て、今、自分がこうあるために理由があってやっちまった事なのだ。


Blu-rayの言いたかったことは何だ?

「録画してるから、あとで見なおせばいいや」なんて、ほかの事をしながらテキトーに観戦してたことか?いや、そんなんじゃない。6回裏までを、わたしに見せたくなかったといえば……。

あ、栗山監督。

栗山監督の顔を見るのは辛かった。久しぶりに見たユニフォーム姿の栗山監督は、わたしの知ってる栗山さんではなかった。いつものメガネをかけてないせいもあるけど、痩せてやつれ……疲れているように思えた。目の下にはクマさんまでいる。

心労を思うと、わたしの胃が痛くなりそうだった。選手はわたしの子供世代。栗山監督はわたしの2歳上。どうしたって栗山監督に感情移入してしまう。


大谷選手がトロフィーを受け取った時「早く栗山監督に持たせてあげて!」と思った。そして本当に手渡された瞬間、涙がぼろぼろ出た。

「よかったね、栗山監督!」

再放送には、トロフィーを受け取って「重ぇー」と言った場面はなかった。あの時は、いつもの栗山さんだったのに。もう一度見たかったなぁ。


3日ほど落ち込んでいたわたしを、娘が「本屋さんでも行こうよ」と誘ってくれた。

そうだ!栗山監督、本を何冊も出してた。それを読まないと。これからのわたしにとって大事なこと、答えは、きっとその中にある。


とりあえず何冊か買ってきた。でも読んでる途中で4月になり、今年の仕事が始まってしまった。晴耕雨読。今日のように雨で仕事が休みにならないと、続きを読むことができないでいる。

いつになるかはわからないけど、全部読んだら、わたしの涙がぼろぼろ出たワケをまた書こうと思います。

題名は
『長靴ジャージ軽トラの栗山監督』
になる予定です。


遅くなったけど、

WBCの選手のみなさん。
栗山監督。
関係者のみなさん。


お疲れさまでした。
そして
感動をありがとう。


野球スゲーな。



5月7日(日)のWBCの特番見ました。
栗山さんがいつもの栗山さんでした!

録画の予約もしました。
録画されてるはずです。
たぶん。

え?


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