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オクラとぶりの昆布締め

先日kindleストアを徘徊していたら、私の人生のバイブルの一冊である『食べる女』の著者・筒井ともみさんのこんな本に遭遇した。



『いとしい人と、おいしい食卓』。なんともすてきなタイトルだ。内容は、食にまつわるエッセイ、および『食べる女』映画編に出てくるお料理のレシピで構成されている。

この本がどういうわけか、書籍版だと1,650円なのに電子書籍だと199円という、謎すぎる価格設定……ソラモーね、即ポチ不可避ですよ。

私は昭和生まれの平成育ち、仲良い奴はだいたい同じ、な典型的昭和の人間ゆえ、本はやっぱり紙媒体で読むのが好きなのだけれど、ソロキャンプに出かけるようになってからは、たまにこうしてkindleストアのお世話になっている。スマホにも入れておけるし、持ち歩くのにかさばらないのがいいですよね。ページをめくるあの感覚が好きだから、本を買うのは一生辞められないと思うけれど。


筒井さんの著作は、まだ『食べる女』しか読んでいないのだけれど、小説で抱いたイメージそのもののお人柄が伺えるような、とてもすてきなエッセイだった。ちょっと気になって検索したらお顔の写真が出てきたのだけれど、これがまたイメージ通り。「小股の切れ上がった」という形容詞がぴたりとハマるような、格好良くてチャーミングな女性。すでに70歳を越えていらっしゃるとのことだけれど、どこか少年のような雰囲気もあり、それでいて円熟した女性だけが持ち得る色香もあり……不遜を承知で申し上げますと、私が将来なりたい女性像にドンピシャでハマってる。すてきな文章を書かれる方は、やはりご本人もすてきなのだな、とうれしくなった。


で、この本の中に「オクラの昆布締め」なるもののレシピが出てくる。


オクラの持っている夏野菜の元気を、ひっそりとした昆布の布団でやさしく包み込んでみたら、夕立のあとのもの憂げな気配を感じさせるような味わいになりました。


どうよこの紹介文。こんなん読まされたらなんとしても食べたくなっちまうわい。


ちょうどオクラが安価で手に入ったこともあり、水曜の夜にさっそく仕込んでみた。作り方はいたって簡単だ。板ずりしたオクラを、強めの塩加減でさっと茹でて、料理酒を塗った昆布で包み込み、さらにラップで包んで冷蔵庫で寝かせるだけ。


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同じ日にブリの昆布締めも一緒に仕込んでおいたので、今夜はこいつで晩酌と洒落込んだ。

小鉢に入っているのは、先日の地獄めぐりの果てに辿り着いた伊豆のお土産屋さんで買ってきた梅くらげちゃん。


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のみものは、わがまちのドンキで「特売!」とでっかく宣伝されていたカヴァで。泡ワインをタンブラーに入れるとか、出るとこ出たら打首獄門の刑に処されそうなふるまいではあるけれど……でもおニューのタンブラー使いたいんだもの……。


昆布締めは今までお刺身でしか作ったことがなく、もちろん野菜は初体験。どんな感じかな、とどきどきしながら食べてみたら、マーびっくり!ポリっとしたオクラの表面に、昆布の旨みがたっぷりと染み込んでいて、どちゃくそめちゃんこおーいしーい!筒井さんが「強めの塩加減で」とおっしゃっていたので塩たっぷりで湯がいたのだけれど、大正解だったなー。昆布成分とちょっときつめの塩味が、オクラの持つ甘みをぐっと引き立てている。二晩寝かせた後でも健在なネバネバもいい感じ。野菜と昆布と塩、だけのシンプルな組み合わせなのに、こんなにも滋味に富んだ味わいになるとは!なんだか大発見をした気分だ。この味わいを「夕立のあとのもの憂げな気配」と表現する、名脚本家の手腕よ……脱帽です。ひっそりと慎ましやかながら、妙に後を引く存在感。これはお酒がすすむくんですねえ!

魚の昆布締め、年明けからモクモク燻してばっかりだったけれど、こうして燻さずに食べる喜びもまた、抗いがたい魅力がある。二晩寝かせてキュッと肌を引き締められつつも、中はねっとりと濃厚な食感のブリ……オクラとの相性もばっちりだった。たまたま組み合わせた梅くらげも、コリコリ食感と梅のすっぱさが、オクラともブリとも喧嘩せず、いいバイプレーヤーぶりだったな。大満足です。ごちそうさまでした。


この本には他にも魅力的かつ蠱惑的、私の胃袋を妖艶に誘ってくるレシピが盛りだくさんだったので、他のメニューもぜひ試してみたい。とりあえず次回は、あの映画に出てくる鍋かなー。肉を手に入れるのが(個人的に)難易度高めだけど、ちょっと奮発して作ってみたい。

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