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VCと銀行に同じ事業計画書を出してはいけない理由

スタートアップの融資を支援しているINQの若林( @wakaba_office )です。
 
スタートアップが融資を受けるにあたって、ベンチャーキャピタル(以下、VC)に出した事業計画と同じ事業計画を銀行に出してしまう、というケースをたびたび見かけます。

VCに出した強気の事業計画をそのまま銀行に出すと、必ずNGをもらうと言っても過言ではありません。

今回のnoteでは、スタートアップが銀行から融資を受けるにあたって、なぜVCに出した事業計画と同じ事業計画を出してはいけないのか、その理由をお伝えします。

このnoteは若林によるポッドキャスト「INQ若林のDebt and Alive」をテキストコンテンツとして再編集したものです。ポッドキャストでは、起業家の方や起業準備中の方に向けて、デットファイナンスに関するTipsやノウハウを毎回5分程度にまとめてお送りしていますので、ぜひフォローしてください。

VCの収益源はキャピタルゲイン

なぜVCに出した事業計画と同じ事業計画を銀行に出してはいけないのか、その理由はVCと銀行の収益源の違いを比べると分かります。

VCの収益源は、投資先企業の株式を売却することで得られるキャピタルゲイン(売却益)です。

キャピタルゲインは「企業価値 × 保有株式シェア - 出資金額」で決まります。キャピタルゲインには相場こそあれ上限はないため、投資先企業ができるだけ大きく成長してくれれば、VCはそれだけ大きなキャピタルゲインを得られます。

例えば50社に投資して49社がダメでも、1社が何百倍にも成長してくれればリターンを得られる、ハイリスクハイリターンな投資なのです。

そのため投資先企業に求められるのは、大きく成長し、EXIT(*)すること。従って、VCには野心的で挑戦的な事業計画が刺さります。

*) 出資者が投資先企業の上場またはM&Aによって利益を回収すること

銀行の収益源は金利

一方、融資の出し手である銀行の収益源は金利です。

そもそも金利は法律等で上限が決まっていて、相場もありますので、むやみに高くすることはできません。

50社に融資をして1社でも完済してくれなかった場合、それだけで赤字になってしまうこともあるというビジネスモデルなのです。VCの投資とは真逆ともいえます。

このように銀行の融資は金利の上限があるため、基本的にはローリスクローリターンの投資手法です。

そのため、銀行からすればスタートアップがEXITすることや、急成長することにはほとんど関心ないことが多いです

むしろ着実に返済してくれて、長きにわたって金利をしっかり払ってくれることが重要です。小さく生んで大きく育てる堅実なプランを望んでいます。

従って、銀行には安定的、継続的に収益が出る事業計画が刺さるのです。

起業家は、VCと銀行から求められるリターンがそれぞれ異なるということを意識して、事業計画の内容を考えましょう。

複数の事業計画があるのは問題ない?

「VC用と銀行用に別々の事業計画を用意する」と説明すると起業家の方から、

「複数の事業計画があるのって、モラル的にどうなんでしょうか?

と聞かれることがあります。

このような質問をされたときは、「事業計画=経営シナリオ」と考えてもらうようにしています。優秀な起業家ほど、複数の経営シナリオを想定しているものです。

複数のシナリオのうち、VCにはベストケースの事業計画を提出して、大きなリターンを期待させる。

一方銀行には最も保守的なシナリオを事業計画として提出して、安定的で継続的な経営をアピールする。

このように考えれば、複数の事業計画を作ることに対する違和感は無くなるはずです。

まとめ

今回のnoteでは「VCと銀行に同じ事業計画書を出してはいけない理由」についてお伝えしました。

大きな成長性を求めるVCには、野心的な事業計画を提出しましょう。

一方、安定性を求める銀行には、保守的で安定的、継続的な事業計画を提出しましょう。

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