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【1分で読了!即興小説】打算的なスキル

【お題】

打算的なスキル


【本文】


私の肩にカブトムシが乗っている。

私が舌を鳴らすとカブトムシは飛び立ち、

掌に降り立った。



私はカブトムシの背中を撫でながら、目的の場所に向かう。

そう、憎きあいつの元へ。



彼は職場が同じで、同期である。
彼は優秀で、いつも私の先を行く存在だ。

私は、彼が憎い。

先日、私の顧客が彼に奪われた。
こんなことはこれまで何度もある。

私は、彼が憎い。

先日、私の意中の女を奪われた。

彼が憎い。



私は何とか彼をある一室に呼び出すことに成功した。

そして、クロロホルムで気絶させ、椅子に縛り付けた。




私はその間に、準備をした。

とっておきの死の仕掛けの準備だ。



仕掛けはシンプル。

彼の座る場所の天井には、銃口が彼の脳天に向くように、猟銃を設置。

その引き金には糸を結びつける。


フックを通って、のびる糸の先には、
カブトムシの角が。



そう、カブトムシが歩いて糸を引っ張ると、
引き金が引かれるという設計だ。



私は彼にそれを伝え、存分に脅し倒した。

良い気味だ。




さてそろそろ、頃合いだ。

やっとここで、私のスキル「虫操り」が役に立つ。
人生でこれほど役立ったことはない。




私は舌を鳴らし、カブトムシにダッシュさせる。



するとあまりの力強さに、糸は猟銃そのものを引っ張り、

天井から落としてしまった。



その衝撃で引き金は引かれ、

弾は私の心臓を貫いた。


興奮したカブトムシは、
そのまま私の銃創から体内に潜り込んだ。


これで僕たちは、
いつまでも一緒だよ。



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