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【1分で読了!即興小説】メジャーな敗北

【お題】



メジャーな敗北



【本文】



炭に火を起こし、これでやっと準備ができた。


先程釣って、下処理をした魚を網に乗せ、やっとのことで焼くフェーズに入ることができた。

屋外での不馴れな調理は、楽しさもあるが、
私の性格的にはストレスを感じることの方が強い。

もうこれっきりにしようと、
魚の焼ける香ばしい匂いを嗅ぎながら決意した。



魚がまぁまぁうまく焼けた。

魚を網から上げて、皿に乗せ、
ここからが本番。

魚は、試し焼き、といったところだ。



私はクーラーボックスから、保管容器を取り出し、蓋を開けた。

中には、いくつかの種類の臓物が入っている。



昨日捌いたばかりの新鮮なやつだ。

私はこれに目がない。
一度炭火で焼いて食べてみたいと思っていたのだが、
今日、その夢がついに実現する。


早速、臓物をトングでつまみ上げ、網に乗せる。
一晩タレに浸けておいた、最高の逸品。

香ばしい匂いが私を誘う。



この臓物の持ち主は、本当に糞みたいな奴だったが、
それに反して臓物だけは最高のクオリティだ。

経験上、糞野郎ほど、臓物は良いものを持っている…気がする。



そんなことを考えつつ、焼き上がりを待つ。



数分後、
良い頃合いになった。


私は早速、焼けた臓物を皿に乗せ、
ビールの準備をした。





すると次の瞬間、
何かが私の手元をかすめた。


皿はひっくり返り、ビールはぶちまけられた。


やられた!

上空を見ると、
トンビが飛んでいた。


私は一瞬落ち込んだが、
すぐに顔を上げ、息を大きく吸い込んだ。


トンビも旨いものがわかっておるわ。


感心しながら、次の臓物網に乗せた。


今日の私は機嫌が良い。



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