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介護をしている全ての人へ#72 ~ 競売手続き

 母と兄弟を悩ませる大問題のひとつ、父の債務整理が終盤戦に突入しつつあるが、そこに当の本人である父は存在しない。

2019年3月13日(水) 母の日記

 長男、いつもより早く家を出る。
 夫の様子が朝から変、普段より落ち着きがなく、家じゅうを歩き回る。昨日からの一連の出来事から、普通ではないことが起こっていると感じているのかもしれない。
 私が、夫の様子をよく見て、子供たちに伝えて、今後のことを決めてもらわなくてはならない。
 自分では何も決められない。人の生き死になんて本人以外の誰が決めることができるだろう。
 夕方近く、次男から電話。手術の悩みを打ち明ける。次男は、出来ることは全部してあげた方が残った者の悔いが残らないという。手術をすれば、もしかしたら、治るかもしれないともいう。膵がんだって完解した例がゼロではないのも確か。
 長男の意見は、はっきりとは聞いていないが、昨日の様子から察するに、次男とは反対のことを考えていそう。
 本人はどう思っているのだろうか? 病気の深刻さ、手術とその後に続く化学療法の苦しみなどを理解することができるのか?
 長男、20時過ぎに帰宅。話すきっかけをつかめなかった。

2019年3月13日(水) 私の日記

 午前中、小会議室でKさんを交えての打ち合わせ。隣に座っていると、頭がぼーっとしてしまうくらい幸せな気持ち。
 昼過ぎ、裁判所から電話があった。不動産競売手続きに係る調査の日程を記した書類を送付した旨の連絡。両親の病とは全く関係なしに淡々と手続きが進んでいく。また一段階追い詰められた感じがした。仕事が手につかない。両親は、命と命をつなぎとめる場所を同時に失おうとしている。早く何とかしなくては。
 父と母どちらが先に逝ってしまうのだろう。何の光明も見えない問いが頭の中をぐるぐる回って気が変になりそう。
 午後、高木弁護士に電話。調査への立ち合いをお願いする。

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