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歴史・文化を次世代へ、下田のなまこ壁建築「雑忠」と鈴木浩之さんの挑戦。

みなさん、下田のなまこ壁建築「雑忠(さいちゅう)」をご存知ですか??
旧町内に建つ立派ななまこ壁が残る建物で、下田まち遺産第1号にも登録されています。漆喰と平瓦を使った白と黒の格子模様はとても印象的であり下田の歴史を感じさせます。その雑忠を所有する鈴木一族の代表として、建物の管理に携わっているのが鈴木浩之さんです。(現在は千葉県在住)
元々は「ただのおばあちゃんの家」だった雑忠ですが、所有者として「この建物をもっと下田のために活用したい」と動き出しました。普段はIT関係の仕事や音楽の活動に取り組んでいる鈴木さんが、なぜ雑忠を活用したいと思ったのか。そんな鈴木さんの下田への思いを聞いてみました。

雑忠活用の第一弾として11月13日(土)にはイラスト入門講座を開催予定です。

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――最初に鈴木さんと「雑忠」のご関係について教えてください。

私にとっては雑忠は、下田のおばあちゃんの家でした。
鈴木家は下田で栄えた一族で、江戸時代は廻船問屋(かいせんどんや)(※1)を営み、明治維新の後に運送業を興しました。それが東海バスを走らせる東海自動車へとつながり、私の曽祖父や祖父たちも東海自動車の社長を歴任しました。
東海バスの本社が伊東にあるので、祖父の代からは伊東にも家を構えていました。なので私が小さい頃は夏休みの帰省シーズンになると、まずは伊東の家に滞在して花火大会を見て、その後下田の雑忠の家に移動して太鼓祭りを見る、というのが定番でした。

※1廻船問屋(かいせんどんや):江戸時代、荷主と船主の間にあって、積み荷の取り扱いをした業者。

――まさに田舎のおばあちゃんの家(雑忠)で夏休みを過ごされていたのですね。

はい、小さい頃の私にとって雑忠は「単なる目立つ外観」と「ただのおばあちゃん家」という印象で、当時はその重みなどもあまり感じていませんでした。
下田への縁が濃くなったのはここ2、3年のことです。2年半前に父が亡くなり、相続の時に雑忠の歴史を遡り、その文化的な価値を改めて認識しました。

――どのようなきっかけで活用を考えたのですか??

雑忠鈴木家は私の代で9代目となり、私の兄が9代目当主となります。建物は一族として所有していますが、父が亡くなった後から私が管理に携わることになり、少しずつ下田に関わることが増えてきました。そのタイミングで、「ただ置いておくだけではもったいない、何かできないかな?」と感じるようになりました。

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――なまこ壁の外観が有名ですが、中には入ることはできるのですか?

表向きは非公開としていますが、依頼があれば管理人を通じて見学頂けるようにしています。敷地内には廻船問屋のお店として使われていた建物のほか、いくつかの蔵や、国会議員でもあった曽祖父への来客で使われていた離れなど、複数の建物があります。
知り合いに頼まれた時など、お客さんに雑忠をご案内すると、「入れるとは思っていませんでした」と言われることも多く、今後はもう少しオープンにしていきたいと思っています。今までは外から見てもらうことしかできていなかったので、少しずつ中も活用していければと思っています。

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――雑忠の活用のきっかけは、今の鈴木さんのお仕事との関連はあるのですか。

今は千葉県船橋市に住んでいて、フリーランスとしてIT関係の仕事をしています。また、老人ホームや保育園に生演奏を届ける「パフォーマンスバンク」というNPO活動にも取り組んでいますが、雑忠との関連はまだありません。
その他、船橋ではタウン誌のライターもしています。人やお店にインタビューする中で「地域との関係を深めていくこと」への面白さを見つけました。下田でも地域に入り込んでいったら面白そうだなと感じており、それが雑忠活用の意欲につながっているのかもしれません。

03老人ホームでの演奏①


――下田では(一社)下田青年会議所にも所属されているのですね。

鈴木家は祖父の代で下田を離れてしまっていたので、一族として下田に縁を持つ人が少なくなっていました。自分自身が地域のことを知るため、また雑忠を今後活用していくためにも地域での縁づくりが大切だと考え下田青年会議所(以下:JC)に入りました。2020年7月からJCに所属し、月に一度開催される例会に参加しています。毎月下田に来るタイミングで、お会いできる人に会うような形で縁を広げています。

06青年会議所活動②

05青年会議所活動①


――今回、初開催する講座について教えてください。

今回の講座は雑忠を活用した初めての企画で、「下田のモチーフを描くイラスト入門講座」です。(2021年11月13日(土)に開催)
雑忠の活用の方法を考えていた時に、下田市のホームページで、「下田を遊ぶ・学ぶ 体験講座」の講座企画(※2)の募集を見つけました。「下田の魅力を子どもに伝えること」がテーマであり、雑忠の建物を活用することで、子どもたちが下田の歴史に興味を持つきっかけになるのではないかと思い企画を立てました。
講師には下田で活躍するイラストレーターの土屋尊司さんをお招きします。雑忠の建物の中で、あじさいや金目鯛など下田らしさあふれるイラストの描き方を学ぶ講座となる予定です。この講座での体験を通じて、雑忠や下田のことを学んでもらえたら嬉しいです。

※2「下田を遊ぶ・学ぶ 体験講座」は下田市役所 観光交流課が主催する「下田の魅力を子供に伝えること」を共通のテーマとした体験講座です。

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――今後は雑忠を使ってどのようなことを展開していきたいですか?

まずは広くいろいろな人に建物に立ち寄ってもらえるイベントを試してみたいと思っています。今回のイラスト入門講座以外でも、アートイベントや音楽の演奏会などもやってみたいですね。イベントを通じて雑忠のことを知って体験してもらい、新しい風が入ってくることで今後の活用のアイデアが生まれるのではないかと思っています。是非活用してみたいという人には手を挙げて頂きたいです。

また、地域を発信するメディアにも何らかの形で関わってみたいと思っています。今回はインタビューをしていただきましたが、WITH SHIMODAの発信にも大変興味を持っていますので、今後何かご一緒できたらとも考えています。

――雑忠を活用したいという人は、鈴木さんまでお問い合わせいただきたいですね。

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――最後に、これからの下田について思うことを教えてください。 

駅前の一番目立つ場所のお店が閉まっているなど、昔より町の勢いが衰えてしまったと感じる部分もありますが、鈴木家としては町の盛り上げのためにぜひ貢献していきたいと思っています。先祖や父から立派な屋敷を代々受け継いでいるので、これを次の世代につなげていきたいです。そのために何ができるかを考えています。

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土地や建物は所有しているだけでも維持管理がとても大変だとは思います。下田の中でも知名度が高い雑忠はもっともっと活用され、今以上に下田にはなくてはならない存在になっていって欲しいと思います。そのためには鈴木さんの活用への第一歩だけでなく、地域としての活用に向けた支援なども大切です。歴史ある建物を次世代につなぐために、たくさんの活用のアイデアが出てきて欲しいですね。千葉県在中ではありますが、下田への思いが溢れた鈴木さんの今後のご活躍、そして雑忠からの新しい発信に期待が高まります。

WITH SHIMODA ライター:温泉民宿 勝五郎 土屋尊司
写真提供:鈴木浩之 (1、7、8、9枚目)、土屋尊司(上記以外+イラスト)

雑忠(さいちゅう)
〒415-0021    静岡県下田市一丁目9-15
電話:0558-22-0222

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