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銭婆とカオナシ 第5話

(メインブログ「神様達と共に」で2017年3月16日にアップした「銭婆とカオナシ 第5話」の内容を、一部修正&加筆して再アップしております。)

(過去のお話しのリンクはこちら⇒「第1話」「第2話」「第3話」「第4話」)



安良見命「私は悩み抜いた末・・・。

やはり・・・この封印の面を被り・・・邪神のフリをしてこの場所に留まることにしました・・・。



おそらく・・・それほど待つことなく・・・村人の子孫達はやって来てくれるだろう・・・。

そう考えていたのです・・・。

しかし・・・。



村人の子孫はなかなかやって来ません・・・。

数ヶ月・・・。

1年・・・2年・・・と・・・時間は過ぎていきます・・・。



途中・・・私は何度か邪神達に見かけられますが・・・。

予想していたとおり・・・彼らは面を被った私を見ても反応しませんでした。

おそらく・・・同類と思ってくれたのでしょう。

ただ・・・。



一人で・・・暗い森の中・・・何もせずにずっと待ち続けることは・・・非常に苦しいことでした・・・。

寂しさ・・・。

孤独・・・。

あきらめ・・・。

悲しみ・・・。

さまざまな感情が私に押し寄せてきました・・・。

それらの感情を・・・一つ一つ受け止め・・・消化していくことはあまりにも苦しく・・・。

私の心は少しずつ・・・鈍感になっていきました・・・。

まるで・・・仮面の自分で・・・本当の自分をどんどん覆い隠すかのように・・・。

それによって・・・私の外見は少しずつ変わっていったと思います・・・。



それからまた・・・膨大な時間が流れました・・・。

おそらく・・・30年は経ったのでしょう・・・。

それでも・・・村人の子孫は誰一人来ませんでした・・・。

私の鈍感さはますます進み・・・。

すでに・・・自分が何者であるか・・・。

なぜ自分がここにいるのか・・・。

そのようなことすらも忘れていきました・・・。


そして・・・私は・・・。



カオナシ・・・となったのです・・・。


その後・・・なぜこの狭間の世界にやって来れたのかは・・・自分でもわかりません・・・。

おそらく・・・知らぬうちに異世界の扉を通って来たのでしょう・・・。」


全てを語り終えた安良見命は、フーッと長いため息をついた・・・。

表情は少し疲れている様にも見える・・・。

その様子を、銭婆はただ黙って・・・あたたかく見つめていた。



銭婆「・・・。

安良見命さん・・・ありがとう・・・。

とっても貴重なお話しだったよ・・・。

なんとも・・・大変なことだったね・・・。」


安良見命「・・・。

ありがとう・・・おばあさん・・・。

でも、私が自分で考えて・・・自分で決めたことですから・・・。

・・・。



やはりあの時・・・。

私は神界に帰るべきでした・・・。

無理をしてしまったのは・・・どこかに過信があったのでしょう・・・。

そのせいで・・・あんなことになってしまった・・・。


千尋や・・・湯屋の皆さんに・・・とんでもない迷惑をかけてしまった・・・。

・・・。

・・・・・・。

私の力は・・・本当はあんなことのために使うべきではないのに・・・。



あれでは神ではなく・・・まさに邪神です・・・。

こうなってしまったのも・・・全て私の責任・・・。

全て・・・私の至らなさ故に起きた事なのです・・・。」


うなだれ・・・悔しそうな安良見命・・・。

その様子を見ていた銭婆は、そっと彼に近づき・・・その肩に手を触れた・・・。



銭婆「安良見命さん・・・。

あなたは立派な神様だよ・・・。

その謙虚な気持ちが、きっとあなたを先へと進ませてくれるのでしょう・・・。

私も勉強になります・・・。

でもね・・・。



あなたも神ならばわかっているはず・・・。

起きている全てのことは意味があって・・・必要で起きていたの・・・。

そういう視点で見てごらんなさい・・・。

あなたが現れたことで・・・千尋は人間の世界に帰れました・・・。

白龍も・・・自分の名前を思い出すことが出来た・・・。

妹(湯婆婆)や湯屋の皆さんにとっても・・・あの出来事はよい薬となったはず・・・。

それに・・・私も仕事を手伝ってもらえたし・・・。

あなたは何も悪くない・・・。

むしろ良いことばかりをしてくれたのさ・・・。

誰もがそう・・・。

存在していることに・・・ちゃんと意味があって・・・。

気付かなくても・・・ちゃんと皆の役に立っている・・・。

生きているということは・・・そういうこと・・・。

このことは・・・あなただって・・・わかっているわよね・・・?」


(つづく・・・次回最終回!)

次の話⇒最終回


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