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銭婆とカオナシ 第4話

(メインブログ「神様達と共に」で2017年3月14日にアップした「銭婆とカオナシ 第4話」の内容を、一部修正&加筆して再アップしております。)

(過去のお話しのリンクはこちら⇒「第1話」「第2話」「第3話」)


安良見命「”あの時”・・・。

今から40年ほど前でしょうか・・・。


私が最初にやって来た頃から比べると・・・村の大きな道は固く舗装され・・・景色もいくらか変わっていましたが・・・。

それでも・・・人々の心根や生活リズムは昔とあまり変わっていませんでした。

ただ・・・。

その頃・・・私はなぜか不穏な気配を感じていたのです。

しかし・・・それが何なのかはわからなかった・・・。

私の目から見て・・・特に大きな問題はなかったのです。

そんなある日・・・。

なぜか村人達は一斉に村からいなくなります・・・。

そしてすぐに・・・。

今度は大勢の大人達と・・・大きな機械が何台もやって来ました。

その機械が・・・次々に村人達の家を壊しはじめたのです。


私は・・・なにが起こっているかもわからずに・・・。

ただ唖然として全てを見つめることしか出来ませんでした・・・。


数ヶ月後・・・。

巨大な水瓶が出来た時に・・・。

私はやっと・・・なにが起こったのかを理解することが出来ました・・・。


”ダム”と呼ばれる巨大な水瓶・・・。

この村から遠く離れた・・・中央のエリート達が考えた・・・大きな計画でした・・・。

当然・・・そのことについて・・・私が善悪をつけることはできません・・・。

しかし・・・私が守り続けてきたこの土地はあっという間に消え去り・・・村人達のあたたかい絆も皆・・・バラバラになってしまったのです・・・。

私は非常に意気消沈しましたが・・・。

唯一幸いだったのは・・・私の小さな社だけは取り壊されずに・・・森の中へ移転されていたことでした・・・。



この社があれば・・・おそらく・・・また村人達がここを訪れてくれる・・・。

そしてそれをきっかけに・・・せめて村人達の心にあたたかい絆を・・・再び紡いであげることが出来るかもしれない。

私はそんなわずかな希望を持ち・・・今しばらくは・・・その場所に留まることにしました。

しかし・・・そこは日当たりが悪く・・・。

当然・・・もう人間は誰も手入れをしてくれません・・・。

すると次第に・・・。

その場所の気が滞るようになり・・・。

しかも・・・悪いことに・・・。

村を破壊した人間が引き連れてきた邪神達が・・・社に目をつけ・・・。

自分たちのたまり場として活用する様になったのです・・・。


私は・・・すぐに身を隠して難を逃れましたが・・・。

集まった邪神達の力の強さに驚きました・・・。

これほどの強い邪気は・・・かつての時代では・・・ごく限られた権力者にとりつく程度だったのです・・・。


彼らは・・・私がかつて説得した疫病神や邪神達よりもずっと禍々しい存在で・・・すでに話しが通じる状態ではありませんでした・・・。

自分たちが愛を見失っていることはもちろん・・・愛が実在することすら・・・完全に忘却してしまっている様に感じられました・・・。

それ故・・・もし彼らが・・・輝く愛を発している私を見つけたのならば・・・すぐに激しく攻撃したくなることでしょう・・・。

彼らにとってもはや愛とは全てキレイ事であり・・・完全に否定されるべきものだからです・・・。

そしておそらく・・・今の私の力では・・・彼らの強い邪気に立ち向かうことは出来ず・・・一度捕まったら無茶苦茶にされてしまう・・・。

もしそうなれば・・・私の魂は激しく傷つけられ・・・私自身も邪神となってしまうかもしれない・・・。

それで・・・私は非常に悩みました・・・。

この状況でもまだ・・・ここに留まるべきか・・・。

それとも・・・もう神界に帰るべきか・・・。


しかし・・・。

私は・・・あの時・・・約束したのです・・・。

あの少女と・・・村人達と・・・。


やはり・・・。

彼らが・・・なけなしのお金を集めて作ってくれた社を・・・私は簡単に捨てることは出来ない・・・。

せめて・・・この社に村人達の子孫が訪れてくれるのを待ち・・・。

彼らの心に最後の奉仕・・・あたたかい絆を届けてから・・・。

それから立ち去りたいと・・・そう思いました。

しかし・・・邪神達の力は強く・・・この光り輝く体のまま・・・ここに留まるのは非常に危険でした・・・。

いざとなれば・・・一時的に彼らの力を弱め・・・愛の力を人に届けることも出来ますが・・・。

それは・・・最後の力としてとっておきたい・・・。

そこで私は・・・一つの方法を思いついたのです・・・。


そう・・・。

自らの封印術を組み込んだ面を作り・・・。

それを被ることで愛の輝きを抑え・・・邪神のフリをし続ける・・・という方法でした・・・。」

(つづく)

次の話⇒第5話

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