見出し画像

銭婆とカオナシ 最終回

(メインブログ「神様達と共に」で2017年3月18日にアップした「銭婆とカオナシ 最終回」の内容を、一部修正&加筆して再アップしております。)

(過去のお話しのリンクはこちら⇒「第1話」「第2話」「第3話」「第4話」「第5話」)


銭婆「そう・・・。

あなたがこの世界に来てくれたこと・・・。

湯屋でゴチャゴチャしたことも含めて・・・。

ぜ~んぶ・・・それで良かったのさ。

私ぁ思うんだけどね・・・。

きっと・・・あなたの中の神の部分が・・・見えないところでちゃぁんと働いていたんだよ。

だから・・・全てがちゃんと導かれていた・・・。

ほら・・・?

そうじゃないかい?」


銭婆の話を聞いて、目を潤ませる安良見命・・・。

安良見命「・・・おばあさん・・・。」


銭婆「だから、もういいのさ・・・。

あなたはちゃんと反省したんだから・・・これ以上自分を責めることはない・・・。

あなたはよぉくわかっている人・・・。

だから・・・ここからはもう・・・次のステップに進みなさい・・・。

それが・・・この世界の仕組み・・・自然というものだからね・・・。」

すると・・・。

安良見命の目から、ポロポロと大粒の涙がこぼれだした・・・。


安良見命「・・・おばあさん・・・。

ありがとう・・・。

・・・でも・・・。

でも・・・違うんです・・・。

私は・・・かつて・・・。

とても負けず嫌いな神でした・・・。


神の世界では・・・たくさんの人間に寄り添い・・・たくさんの苦労を乗り越えた神ほど力強く・・・輝かしいオーラを持っています。

その力強いオーラを見て私はいつも・・・。


『あんな輝き・・・私だって本気を出せばすぐに身に付けられる』

と・・・思っていたのです・・・。

本当は妬んでいたくせに・・・。

その気持ちとは向き合えずに・・・。


だから・・・私が人間と向き合ったのは・・・。

本当は・・・誰にも負けたくなかったから・・・。

自分のために・・・人間と向き合っていたのです・・・。

でも・・・。

今・・・わかりました・・・。

私は・・・人を支え続けていたつもりでしたが・・・。

本当は・・・私が支えられていた・・・。


人の笑顔に・・・。


その・・・あたたかい心に・・・。

支えられ続けていた・・・。

私はただ自分の力で・・・みんなを支えているつもりだったけど・・・。

でも・・・本当は私の方が支えられていた・・・。


人の心がこんなにもありがたいものだなんて・・・!

私はずっと気付いていなかった・・・!!

ずっと・・・見えないところで・・・私は支えられていた・・・。

ず~っと・・・。

ず~~~っと・・・人間に支えられてのです・・・!!

うぁあ~!!!」


溢れる涙と・・・その想いを抑えることなく出し続ける安良見命・・・。

銭婆も涙ぐみながら、その様子を見つめている・・・。

そして・・・。


あたたかく大きな手で、安良見命を抱きしめる銭婆・・・。

その想いを・・・ささやくように伝えた・・・。


銭婆「あなたはね・・・。

痛みを知ったの・・・。

人間の心はたくさん痛んでいるから・・・。

だから・・・あなたは人間の心の痛みを・・・自らが体験することで知ったのよ・・・。

あなたは愛が深い神・・・。

だからね・・・どうしても知りたかったの・・・。

人間がなんで苦しんでいるのか・・・。

なんでこの世界は悲しいのか・・・。

あなたは・・・そうなるワケを知りたかったのよね・・・。

これは・・・大きな学び・・・。

あなたにとって・・・大きな大きな宝・・・。

この気付きを・・・大切に・・・。

それはきっと素晴らしい力となるでしょうから・・・。

その力で・・・たくさんの人達・・・。

たくさんの心を痛めた人達を・・・助けてあげてね・・・。

それは私には出来ないこと・・・。

でも・・・あなたになら・・・それが出来るのだから・・・。」


その言葉を聞いた安良見命は・・・銭婆の胸の中で、しばらく泣き続けた・・・。

銭婆は・・・そんな安良見命の頭と背中を優しくなでながら、あたたかく抱きしめ続ける・・・。


しばらくすると・・・。

安良見命は泣くのを止めて、スッキリとした表情でこう言った・・・。


安良見命「おばあさん・・・。

私・・・こうしてはいられませんね・・・!」


銭婆「そうだね・・・。

残念だけど・・・お別れの時間だね・・・。」


家を出て、夜空に舞い上がる安良見命。

そして・・・銭婆の方へ振り返って、最後の別れを伝えた。


安良見命「おばあさん・・・。

本当に・・・本当にありがとうございました!

このご恩は永遠に忘れません・・・。」


銭婆「あっはっは。

恩だなんて・・・よしておくれ。

私はやりたいように生きているだけだから。

あなたはずっと素敵だったよ・・・。

カオナシの時も・・・今も・・・ずっとね・・・。

また会えたら嬉しいわ。

その時には・・・もっともっと素敵な神になっていておくれ。」


安良見命「もちろんです・・・!

ありがとう!

さようなら・・・おばあさん!

またお会いしましょう!!!」


こうして、安良見命は神界へと帰っていった・・・。

力強く光り輝き・・・夜空を舞い上がるその姿は、まるで・・・多くの人々の希望を乗せた一筋の流れ星のようであった・・・。


おわり


「銭婆とカオナシ」シリーズ・・・以上で終了でございます!

10日間にわたりお付き合い下さりまして、ありがとうございました!(^^)


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?