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稼ぐための経営じゃなくて「使えるお金を最大化する」のが福祉経営

先日事業所の見学に来ていただいた方とお話をしていました。
今、生活訓練という事業と就労移行・就労定着支援という事業、そして制度外の事業として住居支援や就労定着支援が終わった後のサポートの仕組み、そして生活訓練を行なっている場所を使って成人期の引きこもりの支援を行なっていこうとしていることについて話したのですが、そこでひとこと刺さった言葉がありました。
 
 

「保護者からしたら、一番怖いのは支援やサービスが急になくなることなんです。続けていくのにお金の問題ってやっぱりあるじゃないですか。それは分かっているからこそ、無償で動いてもらうと遠慮してしまったり少し不安になったりする。ある日急に『もう動けなくなりました』ってなるんじゃないかと思うと。ちゃんとお金を払っているとその心配はしなくてよくなるなぁ、と思います。」
 
 
というもの。
 
 
もちろんその意見を全てとは思いませんが、少なくともどの制度外事業も決して大きな需要ではないけれど、それを選んで下さる利用者さんやご家族もいらっしゃるわけで、決して否定されているものではないんだろうな、という実感を持ってその話を受け止めました。
 
 

 
今さらな話ですが、「福祉」だからってなんでも国からお金出てるわけじゃありません。
でも、必ず必要な支援やサポートのニーズは生まれていて、そこに支援を生み出さなきゃいけません。
悲しいかな何をやるにもお金ってかかるので、僕らはそれをどうやってやりくりするか、という事と向き合いながらやっていかなければいけません。
 

寄付やクラウドファンディングを募るのか
ボランティアで賄うのか
助成金をもらうのか
利用料金などを頂戴するのか
制度事業などに乗せて報酬を得ていくのか
 
 
ここに関してだけは結局やっていることは福祉でも一般の仕事の仕組みと全く変わらなくて、継続可能性がなければ無闇に踏み出すことができない、もしくは無闇に踏み出したら必ずどこかで続けていけなくなるんです。
 
福祉だからって、いいことだからって誰しもが資金を充ててくれるわけはなくって、そこは動かしていく人がどうにかしていかないといけない、ということです。
 
 
福祉という業種は「売れるから売る」じゃないし、「あったら便利なものを作って売る」みたいなスタンスではなく、「これがなくて困っている人がいるから必要なコトを生み出す」という場所です。
一般の社会と同じような運営や経営の構造を持っているのに、社会の課題を解決するためにいつもクリエイティブを求められているような感じです。
 
 

そういう観点から観ると、僕らは自分達の活動の範囲やスケールをお金に左右されていて、世の中の構造にも左右されているんですよね。
 
 
福祉だからって、支援だからって、それが求められてて価値が高い活動でも、お金が回らなくなって活動が立ち行かなくなった時点で終わり。
そこには容赦も何もなくて、むしろ活動を止めてしまった側の経営能力の責任です。
活動を継続していくことまでが僕らの活動には必ずセットです。
例えどんなに社会の中で必要と思われる活動であろうが何だろうが、誰かがその活動継続の面倒を見てくれるわけではありません。
 
 
 
そうならないためには、福祉に携わってる僕らは常に活動を生み出していくクリエイティビティと共に、お金に容易に左右されないだけの力も持ってなきゃいけなくて、選択肢を持っておく必要があります。
選択肢の多さ=自分達のやれる事のスケールになるので、どれだけの運営、経営の選択肢を自分の引き出しとして持っているかって大事なんです。
 
 
 
 
国からの給付金や委託事業は、安定的な経営においてはもちろん必要なものだと思いますが、当たり前だけどそこには幾分かの制約が伴います。
国や自治体が今のリアルな地域環境や課題をキャッチしてるわけじゃないので、そこにはリーチしづらいかもしれません。
 
 
それしか経営の方法論を持っていなければ、事業規模は広げられても活動のスケールは頭打ちです。
 
 
自分達の活動のクリエイティビティを確保しながら継続可能性を確保していくには、やっぱり自分達でそのためのお金を担保する術を考えないといけません。
 
 
 
他の人はどうなのか分かりませんが、少なくとも僕は「稼ぐ」ための経営じゃなくて、そこに携わる人がちゃんと食っていけることも含めて、自分達が本当に必要だと思うアクションを起こすために、「使う事ができるお金を最大化」するスキルや手段に関心があります。
 
 
一般の業態の経営にだって、学術としての経営学にだって僕らが福祉業として転用できるものはたくさんあります。
制度になければそのインフラはどうにかして作るしかないし、やる限りは継続できるカタチを作らないといけません。
 
 
支援の質
必要なインフラを生み出す事
それらを運営し続けるための経営
 
 
これらのバランスをどう取りながら、自分達の活動のスケールを構成するのか。
 
 
 
つくづくこれは奥が深い問いだと思います。
目の前の支援だけしてればいいわけじゃなく、社会にとって必要な支援やインフラを生み出す事を怠らずに、かつそれらが継続して回っていくための方法論を持ち合わせていく必要がある。
 
 
 
福祉が前に進むためには、もしかしたら福祉の経営のあり方自体が変わる必要があるんじゃないかと僕は思っています。
 
 
何が正しいのかは分かりませんが、トライ&エラーを繰り返しながら、何とかこの問いを解いていきたいと思います。

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