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福祉の周りに存在する「分断」をなくすには

今、地域の中で地域福祉のプラットフォームをつくるための助成金プロジェクトに参加をさせていただいています。
まだまだ動き出したばかりのプロジェクトです。
4つの小プロジェクトの集合体で、地域と福祉、そして当事者や家族を繋いでいくためのアクションがそこには詰まっています。
 
 
なぜそんなプロジェクトを始めることになったか。
 
 

この1〜2年地域の内外で色んな方と繋がらせていただくようになる中で、気づいたことがあります。
 

 
福祉制度にはたくさんのスキマがあるということは従事者としてずっと感じていました。
支援が必要な部分に支援を行うための資源がない、支援するための仕組みがない、マネタイズが出来ていない領域だと一時的な支援はなされていても、それが再現性も継続性もなく熱意のある支援者のシャドーワークとして、その場の問題が解決したら消えてしまう支援。
 
 
だったら支援者がそんな中で熱量を失わないように、制度のスキマを埋めるためのアクションを少しずつでも起こせるように、という事で自分でコミュニティを作って活動を始めました。
 
 
ところが、いろんな方と繋がっていく中でどうやら制度のスキマがあるだけではなくて、そもそも福祉にまつわるいろんなところにスキマ(分断)があるんだ、ということが見えてきました。
 
 
僕はお恥ずかしながら介護の世界から障害福祉の分野に来てかれこれ8年位経ちますが、児童期でどのような支援がされているのかを知りません。
勉強しろよ、という話ではあるんですが、知識として知るものではなく、それこそ現場で支援者さんが何を考え、思い、目指して支援をしているのか、という事を知らないんです。
 
 
逆に言えば、児童期の支援者も成人期の支援を知らなかったりします。
同じように知識として知らないんじゃなく、成人期の現場で支援者さんが何を課題と感じながら、どこを見据えながら支援しているのか、という事です。
 
 
 
また、昨年から当事者の保護者さんと支援者が座談会や飲み会形式で保護者さんの不安や悩みの相談を受けてディスカッションをする、というイベントに参加させてもらっているんですが、いつもなら事業所で利用のご相談をいただく時には聞いたこともないような将来のお子さんについての不安、そしてご自身の抱える不安を知りました。
 
 
そして保護者の方の不安がいかに当事者の生活や人生に影響を及ぼすものなのか、ということを知り、改めて当事者を支援するということはつまり、その方の人生や生活全てを見つめていかなきゃいけないということを気付かされたんです。
 
 
 
僕は今、社会との接点として就労移行という仕事をしていて、いろんな方を社会に送り出していますが、うちの事業所だけでなく、おそらく今社会に出て活躍されている身近な当事者さんの姿やエピソードって、ほとんど知られていません。
 
 
実際にどんな方が社会に飛び出して活躍しているのか、今現在当事者の子育てをされている保護者の方が身近に知る機会はあまりありません。
同業者間でもよく知らないかも知れません。
 
 
 
就労支援をしていると、企業さんによく言われるのは「どうやって受け入れをしていけばいいか分からない」です。
社会の中では障害のある方は未知の存在で、どう対処したらいいか分からないから漠然と怖かったり不安だったりするようです。
もちろん差別的に見ている方もいると思いますが、「知らない」から構えてしまう、の方が圧倒的に多いんじゃないでしょうか。
 
 
 

 
つまり、福祉と社会の間には「知らない」事による分断があるんです。
福祉と保護者や当事者の間にも「知り合えていない」事が分断としてあります。
そして多分福祉と福祉との間にも「知らないこと」が意外にも多い、という分断があるんじゃないかと思うんです。
 
 
 
知識としては知っているけれど、それぞれの想いや考えや不安が「知らない」事によってお互いの姿が見えないままでなんとなく他人事や対岸の火事になってしまっていることで、余計に生まれている地域課題もあるんじゃないかと思います。
 
 
もしかしたら「知る」事ができるだけで解決できることがあるかも知れない。「知り合う」事ができたらなくなる不安もあるかもしれない。「知る」機会が生まれることで気づくことやアイデアが生まれるかも知れない。
 
 
そして「知り合う」ことで繋がりが増えることで意外と福祉や支援のスキマって埋まるものがあるのかも知れない。
 
 
地域の福祉は、社会も福祉同士も家族も本人も、もっとお互いを知って繋がるためのプラットフォームが必要なのかも知れないと仲間と話していく中で感じるようになったわけです。
 
 
 
そんなこんなで地域福祉のプラットフォームを作る取り組みに踏み出すことになりました。
 
 
 
そんなわけで生まれたプロジェクトの中のひとつで現在手掛け始めたのが、「相談支援ファイル」という、児童期のお子さんの成長や変化を記録していくためのツールの「成人期版」を作ろう、という小プロジェクトです。
 
 
もちろんこれは児童期の本人の変化や受けてきた支援の変遷を成人期が引き継いでいくこと、成人期の中でもステップを踏まれる中で支援者が変わる事があるので、その時に支援が分断されないように、文字通りひとりの人生を「継ぎ目なく」繋いでいくためのツールとしてこれから開発していこうとしているんですが、本当の願いはこれだけではありません。
 
 
このツールを媒介にして支援者がお互いの分野の支援や見ているもの、想いや思考を「知り合う」事が出来るようになることです。
 

現在このツールを開発するのに、児童期、成人期の各分野の支援者が携わっています。
一般就労、福祉的就労、生活支援、児童期成人期の相談、幼児期支援、児童発達支援などのメンバーが集まって議論を交わしています。
 
 
そしてこのツールが完成したら、運用していくための研修やディスカッションの機会を作っていくようになると思います。
 
 
こういった交流の中で、ふだんはそれぞれの分野の中で支援を行っている支援者が互いの視点や支援の価値観を酌み交わしながら互いを知って、それがまたそれぞれの分野での支援の中に反映されていくような流れが生まれてほしい、というのが一番大きな目的です。
 
 
すでに開発ミーティングでも「ひとりの人生のライフステージ」を見つめながら、何を残していかなきゃいけないか、次のステージにどんな事を伝えていく事が必要なのか、の議論が熱く繰り広げられています。
 
 
支援者が人の支援のための議論に熱狂すること。
その中で知識では得られない支援のリアルな姿を知り合え語り合える、そんな場がもしかしたら福祉の中にある分断を解消し、本当の意味での地域福祉のプラットフォームになるんじゃないか。

 
 
今、そんな思いでこのプロジェクトを進めています。
きっとこういったアクションがこれから地域の福祉を前に進めるためには必要になるんじゃないかと思っています。
 
 
頑張ってみます。


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