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屋久島の杉はなぜデカイのか

NHKの番組『ダーウィンが来た!』で屋久島の杉について特集されていました。屋久杉はなぜあそこまでデカイのか?

ここで自分の理解も含めてまとめておきます。

○屋久杉は本州の杉とどう違う?

そもそも屋久杉とは、屋久島の標高500m以上の山地に自生するスギの呼称です。つまり、本州のスギと同じ種です。本州のスギは樹齢が長くても500年程度、幹周(みきしゅう)は8mを超えるものは稀であるのに対し、屋久杉は樹齢2,000年以上、幹周は8mを超えるものがゴロゴロあります。

屋久島と聞いてすぐに思い浮かぶ「縄文杉」は屋久杉の1個体です。その縄文杉に至っては樹齢3,000年以上、幹周16.1mというとんでもない古木です。

画像出典: 屋久島 Trekking navi

○幹周って測る場所によって変わるのでは?

「巨樹・巨木林調査」を行う際には、環境省が決めた計測方法を用います。調査木の幹周は地上から130cmの高さをcm単位で測ると決まっています。

斜面に生えている場合には、山側(高い方)で地上(根元)から130cmの高さで測ります。

根が地面から上に上がっている時はは、露出している根の上端から130cm上を測ります。

参考:巨樹・巨木林の基本的な計測マニュアル

○屋久杉はなぜ本州の杉よりデカイ?

さて、一番の疑問です。

『ダーウィンが来た!』では、屋久島という島の成り立ちが関係していると紹介していました。屋久島は1,500万年前(中生代の終わり頃)の地殻変動で海底に亀裂が生じ、その裂け目に花崗岩マグマの貫入活動があり、海底の隆起が起こって出来たと言われています。つまり、屋久島は花崗岩という岩の塊であり栄養の少ない地質なのです。

ここからは僕の理解です。栄養の分配方法として根の増生と材質の硬化を天秤にかけた結果、屋久島の土壌では後者を選ぶ方法が環境に適応していたという事なのではないかと考えています。栄養が少ない土壌では急速に大きくなって根を伸ばし続けても栄養吸収量の増加がたかが知れており、比較的コスパの悪い成長戦略となってしまいます。一方、大きくなるスピードを抑える代わりに材質をより硬くしてゆっくり成長する生存戦略をとると、栄養吸収量の増加は見込めない代わりに天候の変化に強くなり限られた栄養で確実に成長し続けることが出来ます。例えるなら、うさぎと亀の話のうさぎは本州のスギ、亀が屋久杉でしょうか。

実際、本州のスギと屋久杉は年輪の密度が異なります。本州のスギは年に1,2cmずつ大きくなるのに対し、屋久杉は年に1,2mmしか大きくなりません。木目が詰まっており、比較的腐りにくい構造になっています。

屋久杉の年輪

画像出典:NATURE DESIGN

○屋久杉の上に生える植物は樹皮に生えているの?

画像出典:

樹皮に生えているわけではありません。

屋久島に生存する植物種のうち15%は屋久杉上に生えると言われています。これは樹皮から直接生えている訳ではなく、幹上に積もった落ち葉が腐葉土となり、そこへ種が生着して繁茂するのです。種は風で運ばれてくる、ネズミが貯め込むなどして持ち込まれます。

自分の葉が幹の上で腐葉土となり新しく植物が生えだすなんて壮大な話ですね!

植物の特徴には地理的歴史が大きく関係していることがよく分かりました。一度屋久島に行って実際にこの目で見てみたいものです。

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